サービス提供責任者についてお話しさせていただきます。
━━サービス提供責任者とは何ですか?
サービス提供責任者とは「ホームヘルパーを利用したい人や、利用者のための相談窓口になる人」
ケアマネジャーから利用依頼相談を受け、支援内容を確認し、訪問介護計画を作成し、訪問するヘルパー予定の調整役となります。
そして、実務にあたるヘルパーへ指示を出したり、またはヘルパーから報告相談を受け、情報発信していく役割をサービス提供責任者は担っている、いわば事業所の舵取り役とも言えます。
情報の共有がどれだけできているか?によって、提供するサービスの質が良くも悪くもなっていくので、情報がいかに大切なのか?ということをヘルパーに伝え、指導していくのもサービス提供責任者の重要な役割です。
━━サービス提供責任者になる資格要件や受けなくてはならない研修はありますか?
- 介護福祉士
- 実務者研修修了者
- もしくは過去のホームヘルパー1級修了者
- 介護職員基礎研修修了者
であればサービス提供責任者になれる要件を満たしています。
※サービス提供責任者になるための特別な研修はありません。
介護職員初任者研修修了者、ホームヘルパー2級修了者でも、介護実務経験が3年以上あればサービス提供責任者になることは可能ですが、事業所の介護報酬が10%減算されてしまうので、サービス提供責任者での採用は、あまり現実的ではないでしょう。
━━サービス提供責任者の仕事内容について教えてください
サービス提供責任者は、サービス開始にあたり、ケアマネジャーから提示されるケアプランに基づいて「訪問介護計画」を作成します。
それぞれの利用者を支援するポイントをよく理解し、直接介護にあたるヘルパーと同行訪問し、その方への介護支援のポイントや手順を伝え、指導します。
新規利用者の対応と通常業務の内容についてお話しますね。
1. 新規利用者の対応について
新規利用者のサービスを開始する場合は、ケアマネジャーから新規利用者の相談を受けます。
「支援してほしい内容」「訪問希望時間・曜日等」をケアマネジャーから詳しく聞き取り、現在のヘルパー体制で引き受けることが可能かどうかを検討し、可能であれば、そのまま引き受けます。
条件が整ったら、利用者と事業所とで利用契約を交わします。
契約内容の説明などは、サービス提供責任者が直接利用者宅に訪問し、利用者本人、家族へ説明します。
契約時には、ケアマネジャーも同席することがほとんどで、契約と同時に、利用開始に向けたサービス担当者会議が開催されることが多いです。
利用開始後のトラブルを防ぐためには
- 支援内容の確認
- 利用者・家族・ヘルパーそれぞれの役割
- 利用者ができること・できないことの確認
をしっかり行い、書面に残しておくことが大切です。
契約後は、実際に訪問するヘルパーを同行して繋いでいきます。
ちなみに、希望通りの時間や曜日に、訪問予定がどうしても組めない時には、訪問可能な時間帯などの代替案をケアマネジャーに提案します。
少しでも力になりたいという姿勢は大切ですよね。ケアマネジャーとの信頼関係を築くためにも必要な配慮だと考えています。
2. 通常業務の内容について
次に、通常業務の仕事内容に関してですが、日々のヘルパー訪問予定を組むことから始まります。
私の事業所では、パソコン上で訪問予定表を管理しており、縦軸をその日出勤するヘルパー、横軸を時間として、何時に誰がどの利用者宅へ訪問しているのかが、一目瞭然になるように表記しています。
訪問が抜けることがないように、他のサービス提供責任者とダブルチェックをしたりとルールを作り、細心の注意を払います。
訪問予定表ができ次第、ヘルパーに予定を連絡し、訪問依頼をした際に、併せて利用者情報を伝え、ヘルパーからも何か気になる事がなかったか?など、こちらからも情報を聞き取りします。
現場で支援に携わっているヘルパーは、日々の様々な利用者の様子を私達サービス提供責任者よりもたくさん感じる部分があるので、どんな些細な情報でも、後の支援の大きなヒントになることがあるので、密に連絡を取り合うことは本当に大切です。
ヘルパーさんは現場では一対一の仕事だからこそ「聞いてなかった、知らなかった」では、利用者との信頼関係をなくしてしまいかねないですからね。
過去には気になった情報をケアマネジャーやご家族に発信したことで、利用者の体調変化にいち早く気付き、早期受診に繋がったというケースもありました。
また、日々の活動の中で、利用者との関わり方に悩むヘルパーも多々おり、ちょっとしたことでもヘルパーの相談に乗ることや、励ましの声かけやアドバイスをすることも、サービス提供責任者の役割ですね。
ヘルパーのモチベーションを上げることで、サービスの質も上がっていくので、全員が気持ち良く働ける環境にするにはどうしたら良いか?ということを常に考えています。
━━1日の仕事のタイムスケジュールを教えてください
普段の1日の仕事の流れです。
9:00 | 出勤 |
9:00~9:45 | 一日の予定確認。訪問予定表作成。ケアマネジャーとの連絡調整。 |
9:45~10:00 | 利用者宅へ移動 |
10:00~11:00 | 身体介護(オムツ交換・清拭・水分補給)生活援助(洗濯・居室掃除・洗濯) |
11:00~11:15 | 利用者が待つ病院へ移動 |
11:15~11:45 | 通院乗降介助。受診を終えた利用者を自宅へ送る車の乗り降り、歩行等移動介助 |
11:45~12:00 | 事務所へ移動 |
12:00~12:30 | 事務所にて、ケアマネジャー等報告連絡訪問予定表作成。訪問予定をヘルパーへ連絡 |
12:30~13:30 | 昼食休憩 |
13:30~13:45 | ヘルパーからの報告事項、ケアマネジャーとの連携記録等業務日誌入力 |
13:45~14:00 | 利用者宅へ移動 |
14:00~15:00 | 生活援助(掃除・買い物支援) |
15:00~15:15 | 事務所へ移動 |
15:15~15:45 | 訪問介護計画作成 |
15:45~16:00 | 利用者宅へ移動 |
16:00~17:15 | 新規利用者宅訪問。契約業務。サービス担当者会議出席 |
17:15~17:30 | 透析患者の利用者が待つ病院へ移動 |
17:30~18:00 | 通院乗降介助(病院から自宅へ送り、歩行等移動介助) |
18:00~18:10 | 事務所へ移動 |
18:10~18:30 | 事務所にて、ヘルパー訪問予定連絡。業務日誌入力 |
業務終了 |
サービス提供責任者も、訪問に入って利用者の状況を把握します。
その日の出勤体制によって、訪問に出る件数も変わるので、業務連絡や訪問予定表の作成は、訪問の合間に行っています。
━━サービス提供責任者の配置基準について教えてください
配置基準については、訪問介護サービスの利用者数が40名、またはその端数を増すごとに1人以上配置する、と定められています。
私の所属している事業所では120名程の利用者を受け持っており、サービス提供責任者は正職員3名が在籍しています。
サービス提供責任者は管理者を兼任することができるので、一人が職場の取りまとめ役として主任の役職に就きます。
事業所によりますが、サービス提供責任者になることでリーダー職や主任、管理者と更なるステップアップの近道にもなるのではないでしょうか。
━━サービス提供責任者になった経緯は何ですか?
短大在学中にホームヘルパー2級・1級の講座を受講修了し、新卒で内定が決まった法人の配属先が訪問介護事業所で、しかも、最初からサービス提供責任者という配置だったのです。
ホームヘルパー1級を持っていたことが、たまたまその配置に結びついたのでしょうが、二十歳そこそこで、いきなり「責任者」の任務という文字が目に飛び込み、頭が真っ白になった記憶があります。
最初はもちろん、ヘルパーとして現場に出る事で、先輩に同行しながら介護の実践を学び、半年くらい経った時に、少しずつヘルパー訪問予定表作成に携わるようになり、同法人内のケアマネジャーとの連携のやり取りを任され、徐々に外部のケアマネジャーとのやり取りも任されていく、という流れでしたね。
━━サービス提供責任者としての給料はどのくらいですか?
給料は役職がつくかつかないか、経験年数や介護福祉士の有無などで違ってきます。
訪問介護事業所は、大抵の場合、正職員がサービス提供責任者になることが多く、ヘルパー職は「常勤パート」や「登録パート」がほとんどですし、正職員も少ない部署なので、サービス提供責任者になれば、主任になるのも早いですね。
私の場合はサービス提供責任者、兼主任で総支給額24万円程です。
内訳は基本給は約17万円で、訪問の時間帯によって休憩時間が流動的になったりするので「特殊業務手当」が2千円、プラス「主任の職務手当」が3万円弱出ています。
手取りのお給料だと20万円前後で、その月の残業代によって変わります。
ヘルパー職は主婦が多く、早朝・夕方が人材が手薄になるので、そこをカバーをする為にサービス提供責任者が入るので、必然的に残業が発生します。
残業代はだいたい2万~4万円で、お盆やお正月時期によっても影響されますが、正直、残業が増えた時期にグンと貯金額もアップしました。
ボーナスは年に2回で2~3カ月分が貰えますが、その年によってボーナスは変動します。
年収は約320万円で、手取り年収だと約210万円ほどになるので、勤務年数5年目ですし、介護職としてはごくごく普通のお給料なんじゃないでしょうか。
━━サービス提供責任者としての素質がある、向いているのはどんな人ですか?
訪問介護は「制度上できる事・できない事」がありますので、情に流され過ぎないように「自分の職務としての立ち位置を常に意識できること」と「物事を客観視できる力」が必要です。
熱い想いを持って、奉仕の気持ちが強いヘルパーさんも中にはいますが、思い入れが強くやり過ぎてしまうケースも見受けられます。
利用者にとっては、それが依存心を生むきっかけになることもあるので、ヘルパーさんの気持ちも汲んで受け止めた上で「本当に利用者さんのためになることってどんな支援なのかな?」ということを上手に伝えられることが必要になってきます。
また、自分より年上の人を指導しなくてはならない場面もあるので「相手の立場に立って配慮ある言葉を選ぶ」事ができるのも大切です。
指導だけ終わらさずに、必ず最後にヘルパーさんの長所を褒めてフォローし、仕事へのモチベーションを下げないように配慮できる心配りが必要なのです。
そして「言葉の裏にある気持ちを汲み取る力」も大切で、サービス提供責任者は、利用者さんからの相談を受ける立場にありますが、時には苦情を受け付けることもあるので、利用者さんが言いにくいことを、会話の中や表情から察知することが大切です。
苦情はサービス向上のために必要なご意見ですからね。
最後に、何より「チームワークを大切にする人」というのが非常に重要になります。
偏った視点で指摘するのではなく、問題が起きた時に「どうしたらより良い方法があるだろうか?」とみんなの力を引き出しながら、発展的思考をもってリーダーシップをとっていくことで、チーム全体の雰囲気も、いがみ合うことなく、前向きな空気にしていけるのではないでしょうか!?
「利用者を大切に!」=「人を大切に!」=「チーム(職場の仲間)を大切に!」
これが根本にあれば、どんな職場でもやっていけるのではないでしょうか。