新人の介護職は「自己評価表」の書き方に困っていませんか?
勤務先の介護施設の施設長から「自己評価表に記入して提出するように」と言われて受け取った1枚の紙、何をどのように書いたらいいのでしょうか?
先輩介護職に尋ねても「適当に書いて出せばいいんだよ」と、曖昧な答えしか返ってきません。
しかし、この自己評価表は、将来の給料や昇格、業務内容に大きな影響を及ぼす可能性もあるので、書き方のコツを覚えて、しっかり記述するようにしましょう。
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介護職の自己評価表ってどんな様式?
介護施設が介護職に書かせる自己評価表は、さまざまな様式があります。
雑な施設ですと、白紙のコピー用紙を渡して「自分の評価を好きなように書いて」と言われるだけで、これでも一応は「介護職に自己評価をさせた」ことになりますが、あまり好ましくない形態と言えるでしょう。
しっかりした介護事業所は、自己評価表にきちんと質問を記載して、それに答える形で申告させています。
次の自己評価表は、ある介護施設のものを簡略化したものです。
●●老人ホーム 介護職用自己評価シート | ||
氏名 | 記入日 | |
2016年4月から2017年3月までの1年間を振り返って、あなたの仕事ぶりはいかがでしたか。
以下の質問に答える形で「自己評価」を行ってください。 この自己評価表は、人事考課にも使います。 ●●施設長 |
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入社から何年何カ月が経ちましたか これまでを振り返ってみてください |
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この1年間でスキルアップしたことを書いてください | ||
この1年間で成し遂げられなかったことを書いてください | ||
生活支援について自己評価してください | ||
整容に関する介護について自己評価してください | ||
移動・移乗について自己評価してください | ||
食事介助について自己評価してください |
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入浴介助について自己評価してください | ||
利用者様とのコミュニケーションについて自己評価してください |
施設毎に違いはありますが、大体はこのようなイメージと思ってください。
これは自由に書かせる形式ですが、そのほかには、質問ごとに5段階評価で、点数方式を採用しているものもあります。
介護職の自己評価の書き方のポイントを例文を用いて紹介
自己評価表の記入で注意しなければならないのは
- 正直に書く
- 具体的に書く
の2点です。
正直に書くとは、できない仕事を「できる」と書くことも、できているのに謙遜して「できない」と書くことも、どちらも「自己評価ができていないというマイナス評価」になるので、どちらの場合も正直に書く必要があります。
次に「具体的に書く」についてですが、プラス評価もマイナス評価も「どこがどのように良いのか?悪いのか?」などを細かく具体的に書くことが求められます。
例えば次の2つの文章はどちらが好印象でしょうか?
Aさんの記述 | Bさんの記述 |
オムツ交換がうまくできません。利用者さんから『痛い』と言われることがあります。 | 男性のオムツ交換が苦手です。特に尿取りパッドの取り付け位置は、利用者さんごとに好みが違っていて難しいです。ただれや炎症を起こさない付け方を身に付けたいです。 |
どちらも、オムツ交換のスキルが低い介護職のコメントですが、Bさんに対しては「向上心が見られる」「自己分析が的確」「技術面では課題が残るが、利用者への気持ちは強い」といった印象を持つのではないでしょうか?
この事例から見ても、「できないと書くことがマイナスポイントにならない」ということが分かると思います。
「ここができないので、こうしていきたい」ということをきちんと書いてあれば、プラス評価されるのです。
その他の業務におけるNG記述とOK記述を紹介します。
食事介助の記入例
NG記述 | OK記述 |
利用者ごとにメニューが違っていて混乱する。まだリーダーに注意を受けることが多い | とろみ食とミキサー食を間違えて利用者さんに出してしまい、ヒヤリハット報告書を出しました。リーダーからは『嚥下状態は日々変化する』と注意を受けました。アセスメントを心掛けます |
認知症の利用者のケアの記入例
NG記述 | OK記述 |
認知症の利用者の対応は何年経っても慣れない。優しい言葉をかけてもダメなことがほとんど | 認知症利用者の周辺症状について、まだ驚かされることがある。正直『恐い』と感じることもある。先輩からは、原因病気ごとの症状を把握しておくと、問題行動に遭遇しても『教科書通りの反応をしている』と思うことができ、冷静に対応できる、とアドバイスを受けた。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症をもう一度勉強し直す |
なぜ自己評価を書かされるのか?
その①「法律的なこと」
介護施設の責任者や介護事業所の経営者が介護職に自己評価表を書かせるには、介護保険制度に盛り込まれているからです。
厚生労働省は介護施設や介護事業所に、ステップアップの道筋(キャリアパス)を介護スタッフたちに示すよう指導しているのです。
そのため介護施設や介護事業所では、介護職がどの段階で、どのような知識、技術、能力を身に付けておくべきかを定めておかないとならないのです。
つまり、自己評価表を書かせる目的は、介護職ひとりひとりに「いまの自分の知識、技術、能力」を自己申告させて、上司による「他者評価」と合わせることによって、「次に身に付けるべき知識、技術、能力」を明確にすることなのです。
これを繰り返すことによって理想の介護職になれるのです。
その②「昇給、昇格を決める人事考課として」
人事考課という言葉をご存じでしょうか?
人事考課は介護の世界だけでなく、あらゆるビジネスの現場で使われています。
人事考課は、従業員に「通信簿」を付けるようなもの、と考えてください。
なぜ従業員の通信簿が必要かというと、給料を上げたり、役職を与えたりするときの資料にするためです。
もし「通信簿=人事考課」がなかったら、例えば、社長が気に入った人が高い給料をもらったり出世したりする、という事態に陥りかねません。
しかし、人事考課があれば、的確な昇給と昇格ができるわけではありません。
人事考課は直属の上司が付けるものですので、上司の好き嫌いで点数が上がったり下がったりすることがあります。
しかも「ひとつの職場」は閉じられた世界になりやすいので、経営者が実態を把握できないことがあり、「上司が付けた点数=会社の評価」となってしまいます。
人事考課は、公平公正でなければ、効果を発揮しません。
そこで編み出されたのが、自己評価なのです。
もし上司の評価が不当に低かった場合、自己評価表にしっかりと「私の業績」を書けば、経営者はどちらが正しいことを言っているのか調べることができます。
介護業界でも、自己評価表を人事考課の資料に使っているところが現れ始めました。
人事考課は給料や昇給、つまり収入と出世に大きく関わることですので、介護職はしっかり書きましょう。
こぼれ話「ダメな人ほど自己評価が高い」
介護関係者の集まりで「ダメな職員ほど、自分を良く見せようとする」という話題が出ることがよくあります。
こうした集まりの出席者は経営者や管理職が多く、こうした人たちは日々「ダメな介護職」に悩まされ続けているわけです。
こういった上司たちが、自分たちの部下である介護スタッフに自己評価表を書かせると、トラブルを起こしがちな人ほど、自己弁護に躍起になり、他者の批判をするのです。
「自分のことが分かっていないから、自己評価表に自分の欠点を書けない」
「自分の欠点を挙げられないから、仕事への取り組み姿勢を直せない」
「だからいつまでたってもダメ介護スタッフのまま」
上司からこのようなことを言われないようにしなければなりませんね。
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