
離職率とは「ある時点で働いていた介護職のうち、1年以内にその職場を離れた人の比率」のこと。
一般的に、その企業・職場に魅力があると離職率が低くなり、魅力がない企業や職場だと離職率は高くなります。
厚生労働省の調べでは、「労働者全体の離職率は”15.5%”」となっており、一応の目安としては、それより低ければ、その職場は非常に魅力的であると言っても過言ではありません。
では、介護の仕事に関してだと、どうなっているのでしょうか?
イメージとしては「介護職は離職率は高い仕事」という認識の方が多いのではないでしょうか?
これは間違いではないのですが、ただ完全に正しいとも言えません。
正確に表現すると「介護職の離職率は確かに高いが、多少減少傾向がみられる」と変わりつつあるのが最近の傾向です。
介護労働安定センターのデータを元に、介護職の離職の実態を見てみましょう。
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介護職の離職率は本当に高いのか!?データから読み解く
「公益財団法人介護労働安定センター」とは、介護職の雇用の改善や能力の向上などを目指して設立された団体です。
平成26年に公益財団法人介護労働安定センターが、介護労働者の就業実態を調査しており、20,000人以上の回答を集計し、データを公開しています。
この介護労働安定センターが公表している介護職の離職率は次の通りです。
年度 | 2007 平成19年度 | 2008 平成20年度 | 2009 平成21年度 | 2010 平成22年度 |
離職率 (%) | 21.6 | 18.7 | 17.0 | 17.8 |
2011 平成23年度 | 2012 平成24年度 | 2013 平成25年度 | 2014 平成26年度 | 2015 平成27年度 |
16.1 | 17.0 | 16.6 | 16.5 | 16.5 |
データ引用:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」
こう見ると、「直近の離職率は16.5%」と全労働者の平均値とそれほど違いが無いことが窺えます。
介護職の離職率の推移
2007年度には21.6%もあった離職率は、翌年には18.7%と3%近くも改善し、直近では16.5%と、全職業の平均値とほとんど違いがなく、2007年から2015年までの期間で見ると、減少傾向であることは間違いなく、昔の離職率が高い仕事というイメージは変わりつつあります。
ただ、離職率の推移を見ると、2010年度と2012年度に関しては上昇に転じています。
上昇の原因は、単に離職率自体が安定しないという事もありますが、介護の職場は、施設運営が未熟なところも多く「職場長が交代すると雰囲気がガラリと変わる」とも言われており、職場環境の変化によるものであるケースも少なくありません。
ただ、全体的に見れば、介護職の離職率は改善しつつあるというのがデータから窺えますが、改善傾向の要因には何があるのでしょうか?
離職率の低下傾向の要因は!?
昔は介護のイメージは3kで、すぐに辞める人が多いとされてきた職場ですが、近年は少しづつですが離職率は低下傾向にあります。
離職率低下の要因と考えられるものに挙げられるのが、「介護従事者の待遇改善」です。
近年、特に改善傾向にあるのが介護従事者の給料です。
下の表は、介護労働安定センターが公表している「月額賃金」の数字です。
2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | |
介護労働者全体 | 212,972円 | 215,077円 | 217,753円 |
訪問介護員 | 188,208円 | 187,128円 | 191,751円 |
介護職員 | 194,709円 | 196,131円 | 198,675円 |
「介護労働者全体とは」…「訪問介護員、サービス提供責任者、訪問介護員以外の介護職員、看護職員、介護支援専門員、生活相談員、リハビリ職、管理栄養士、栄養士」のことで、この中に事業所管理者と施設長は含まれていません。
「介護職員とは」…「訪問介護員以外の介護職員」を指します。
この表を見ると、介護労働者全体、訪問介護員、介護職員全ての月額賃金が年々上昇していることが分かります。
賃金上昇と、離職率の低下傾向を合わせると、「給料が上がってきているので職場への不満が減り、それが離職率を低下させているのではないか」と推測できます。
ただ、比較的給料が高い看護職員や、リハビリ職を含む介護労働者全体でも、月額賃金が22万円に届かがないのは、まだまだ給料が安いと言えます。
また、給料20万円にも届かない訪問介護員や介護員は相当安いとも言わざるを得ないので、離職率も16%台を維持しているのでしょう。
【課題】どうやって離職率を低下させるか?辞めない職場作りを考える
「どうすれば介護スタッフが辞めないのか!?」
これは現場を管理している人にとっては大きな課題ですが、介護職の離職を減らすには
- 職員全体の給料を上げる
- 職場環境を良くする(働きやすい職場作り)
この2点が絶対に欠かせません。
例えば、職員不足に悩んでいる事業所は非常に多く、介護スタッフの募集をしても、全く応募が集まらないと悩んでいる経営者も多数います。
ですが、他より少し給与を上げて募集を出したら、「定員以上の応募が直ぐに集まった」「すぐに良い人材が集まった」という事例も多数あり、適正な賃金で募集をすることで「人材不足の解消」や「辞めない職場作り」の基礎ができるのです。
実際、「介護の仕事はやりがいはあるけど、給料が安いからやりたくない」という人も多いので、
「給料を上げる(適正な賃金で働ける環境の提供)」
「職場環境の改善」
が離職率低下には欠かせません。
貰える給料(お金)というのは、職員のやる気、モチベーション、就業意欲、仕事への感謝に繋がります。
なので、ココを軽視している介護事業所は、常に人材補填に追われるなど、離職者が後を絶たない状況が加速します。
ですが反対に、急速な高齢化に向けて優秀な人材を確保したい事業所は、少し給与を高く設定してでも良い人材の確保に乗り出していますし、適正な賃金を支払うことで仕事に対する感謝も生まれるので、必然的に職員が長く続けられる環境作りができているのです。
ただ、給料アップについては、厚生労働省は「下げたい」とも考えていると耳にするくらいなので、何もせずにいきなり給料が増えることは期待できません。
基本的には、介護報酬が増えなければ、給料が劇的に増えることもありませんからね。
ただ、日本の人口高齢化への対応を考えると、国は今よりも報酬を下げることは難しく、今後の推移としては緩やかな上昇傾向だと予測しています。
介護職の給料を下げれば、高齢者を支える介護労働者がいなくなってしまう恐れもありますからね。
職場の待遇環境が悪くて辞めたいと思っている介護職員が、現状で1番かんたんに給料を上げる方法は、「他の事業所に転職する」のがベストでしょう。
「昇給が少ない、ボーナスが無い・少ない、基本給が安すぎる」
「新人教育・指導ができていない、職場内の人間関係が悪い、トップに立つ人間が現場に理解が無い」
と不満に思っているなら、現状を変える1手が必要なんじゃないでしょうか。