デイサービスで働く現役の介護職員に仕事内容、給料、施設の実態についてインタビューした内容を紹介します。
スポンサーリンク
━━デイサービス(通所介護)とは、どんな施設ですか?
デイ―サービスは、介護を必要としながらも、自宅で生活しているお年寄りが、日中の時間を介護サービスを受けながら過ごす場となっています。
デイサービスを利用する目的は、「日中に介護をする家族が仕事などで不在になる」「自宅のお風呂を跨ぐなどの動作が難しくなった為、お風呂に入るために利用する」など、利用者様ごとに様々な目的があります。
最近では地域のサークルやサロンなどに参加することを目標に、デイサービスの卒業を促すという方向性をもった通所介護もあります。
━━デイサービスとデイケアは何が違うのでしょうか?
介護保険上の「通所介護」がデイサービス。
デイケアは「通所リハビリテーション」の通称となっています。
デイケアは主に介護老人保健施設や診療所に併設され、人員基準として医師の配置や理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの「リハビリ職員」が配置されることが必要となります。
主に医師の指示に基づいてリハビリを行い、心身機能の維持回復を目指すことになります。
反対にデイサービスは社会福祉法人や株式会社で運営されることが多いサービスです。
主な目的は、必要な日常生活上の介護などの世話、機能訓練を通して社会からの孤立を防ぎ、地域の中で少しでも長く自宅で暮らすことができることを目的としています。
━━デイサービス(通所介護)で働こうと思った理由は何ですか?
祖父母と生活していたこともあり、お年寄りと関わることが生活の中で自然となっていました。
介護の仕事を始めた時は、特別養護老人ホームで働いていましたが、毎日元気にデイサービスをご利用になられるお年寄りと関われることについても、興味を感じていました。
また、それと同時に子どもがいるので、夜勤が負担になってきていたのもデイサービスへの転職を考えることになったきっかけです。
子育てと仕事の両立を考えた中で、夜勤をすることは難しかったので、必然とデイサービスの仕事を探して転職する運びとなりました。
━━デイサービス(通所介護)の介護職員の仕事内容や1日の流れはどんな感じなのでしょうか?
デイサービスでの1日の仕事は、朝の8時30分頃のご利用者様の送迎から始まります。
送迎は軽自動車などの乗用車で、一人で2~3名のご利用者様を迎えに行く場合と、大型ワゴン車で車椅子での移動をする方のお迎えなどに分かれます。
タイムスケジュールにするとこんな感じです。
8:30~8:40 | 朝礼・今日の業務予定の確認 |
8:40~9:30 | 送迎 |
9:30~10:00 | 玄関から座席への誘導、バイタル測定 |
10:00~11:30 | 入浴介助 |
11:30~12:00 | 食事前の口腔体操 |
12:00~13:00 | 昼食介助 |
13:00~14:00 | ご利用者様の休憩時間 |
14:00~15:00 | レクリエーション |
15:00~15:30 | おやつ介助 |
15:30~16:00 | 帰宅準備 |
16:00~16:50 | 送迎 |
16:50~17:20 | 清掃・片付け |
17:20~17:30 | 終礼・今日の振り返り |
上記に示した内容の他に、利用者毎に用意してある連絡帳などにその日の様子を記入したり、家族からの連絡事項への返答を記入する作業もあります。
もちろん、介護記録としての日中の様子や、食事量の観察内容、バイタルサインの記録も必要となります。
また事業所によっては、介護職員が複数の利用者の担当とし、ひと月毎に利用者を担当するケアマネジャーへ、サービス利用時の利用者の様子やケアプランに対する進捗状況の報告書を作成します。
利用者が確実に利用することを目的として、前日のうちに翌日の送迎時間の電話連絡を入れ、「明日はデイサービスがある」という認識を持っていただくという作業も大切な仕事です。
━━デイサービス(通所介護)は日勤のみのイメージですが、夜勤はあるのでしょうか?
基本的にデイサービスにおいて夜勤という勤務形態はありません。
しかし、サービス事業所によっては、デイサービス後にそのまま宿泊できることを特徴としてサービスを実施している事業所もあります。
ですが、ケースとしてはレアなので、基本的には夜勤は無く、日勤のみの仕事になります。
また、夜勤なしだけでなく、日曜日が固定でお休みなどの条件にも対応しやすいので、私のように子育てをしながら働きたい人にとっては、気がね無く働きやすい環境なので、子育て世代の女性(20代後半から40代前半)が多くを占めます。
━━デイサービス(通所介護)の介護職員の給料やボーナスはいくらくらいなのでしょうか?
給料に関しては、運営母体の規模や個人の保有資格にもよります。
介護職員初任者研修を修了している人の初任給は「手取りで12万円~14万円程度」(総支給14万円~18万円程度)です。
介護福祉士を取得して初めての勤務であれば「手取り15~16万円程度」(総支給18万円~20万円程度)になります。
(※どちらも日勤フルタイム正社員の場合)
介護職員処遇改善金もありますが、こちらは施設の実績に応じて支給額が変動するので、運営母体の規模が大きく影響しています。
ちなみに、私が働くデイサービスの場合は、社会福祉法人が運営する大規模Ⅰの事業規模で、介護福祉士取得後3年という経験で
- 基本給15万円
- 各種手当3万円
- 処遇改善金1.8万円
- 賞与年2回(年間3か月分)
年収280万円ほどです。
パート勤務の場合は時給800円~1,000円と経験や保有資格により時給単価が変わっています。
パートには賞与はありませんが、介護職員処遇改善金についてはパート職員にもきちんと支払われています。
ただ、ここでお伝えしている給与事情は、あくまで私の住んでいる仙台での話なので、東京などの関東の場合は、給与水準はかなり違ってきます。
「関東のデイサービス求人の給与例」
- 時給:1,200円(ヘルパー2級)
- 時給:1,300円(介護福祉士)
- ヘルパー2級、介護職員初任者研修→月給:180,000円~250,000円
- 介護福祉士、自動車免許。→月給210,000円〜214,000円
というように、比較的高い水準の給与で募集している事業所も多い特徴があります。
━━デイサービスの施設の種類には何がありますか?
デイサービスの施設の種類は以下の通りです。
・小規模デイサービス(月平均延べ利用者数300人以下)
・通常規模デイサービス(月平均延べ利用者数300人超750人以下)
・大規模デイサービスⅠ(月平均延べ利用者数750人超900人以下)
・大規模デイサービスⅡ(月平均延べ利用者数900超)
上記の形態は運営している規模ごとに分かれており、「月に利用した人数」が基準となっています。
また、上記以外にも認知症高齢者を対象とした通所介護もあります。
・認知症対応型通所介護Ⅰ(単独型)
・認知症対応型通所介護Ⅰ(併設型)
・認知症対応型通所介護Ⅱ(グループホーム等の共用スペース活用型)
形態は特別養護老人ホームなどに併設されているかどうかや、グループホームの中でサービス提供するかによって区別されています。
認知症対応型を利用するには認知症の診断を受けていることが要件となり、人員基準としても通常の通所介護よりも手厚くなっています。
利用する時間帯は複数あり、利用者自身の身体状況や介護者の状況に合わせて利用する時間を選択できます。
~利用者の時間区分と特徴~
・2時間以上3時間未満
病院からの退院後間もない等、長時間のデイサービスを利用することが身体的負担として大きい場合に利用する時間区分です。
・3時間以上5時間未満
食事や入浴などのサービスは必要なく、機能訓練を中心とした利用を求める比較的自立した方が利用することが多い時間区分です。
5時間以上7時間未満のサービスを中心としながらも、この時間帯を希望する方も受け入れる事業所の他に、午前中のみ、午後のみといった短時間型デイサービスとして運営する事業所も増加しています。
・5時間以上7時間未満
最も標準的に利用されている時間区分です。
朝から夕方にかけて食事はもちろん、入浴や機能訓練等を行う時間区分です。
・7時間以上8時間未満
認知症や様々な疾患により常に誰かの介助が必要となっている状況である一方で、介護者である家族も生活のために就労している場合が少なくありません。その場合、家族の出勤前にお迎えに行き、家族が帰宅する時間に合わせてお送りするといった対応を行う場合に利用することが多い時間区分です。
利用するサービス形態や規模、利用時間によって利用料金も変わってきます。
━━デイサービス(通所介護)の求人の近年の傾向や特徴はありますか?
デイサービスの介護スタッフ求人は、ハローワークや求人サイトを見る限り、募集は多いです。
ただ、最近のデイサービスにおける求人は、正社員以外の募集が多く見受けられる感じがします。
正社員も派遣も紹介予定派遣もパートも募集がありますが、中でもパート職員の募集が多くなっているように感じます。
ですが、正社員の募集が全くないとかそういう訳ではありません。
実際に介護求人サイトやハローワークで求人情報を閲覧してみると、
~デイサービスの求人募集例~
デイサービスの介護スタッフ (正社員) |
8時~17時半 年間休日120日 基本給15.5万~17.5万 固定残業代5万~6万 合計20.5万~23.5万 |
デイサービスの介護スタッフ (パートフルタイム) |
4週8休、週休2日制 時給:972円~1,031円 (+処遇改善手当 ) |
デイサービスの生活相談員 | 生活相談員と介護業務兼任 4週8休、日、週休2日 月給21.5万円 |
デイサービス介護福祉士 (パートフルタイム) |
8時半から17時半 週休2日 時給1050円 |
デイサービスの介護求人は介護専門の求人媒体から検索してみることをおすすめします。
ハローワークにもデイサービスの求人は掲載されていますが、デイサービスの介護スタッフの募集はパートでの募集が多いので、ハローワークで探すよりも、正社員、派遣、パート問わず求人を掲載している介護求人サイトに歩があります。
デイサービスの介護求人を探しているなら「スマイルサポート介護」が全国にデイサービスの求人だけで”約7000件”の掲載があるのでおすすめです。
また、派遣での仕事を探しているなら「スタッフサービス・メディカル」にも”約2500件”の求人が掲載されているので、どちらも求人情報を確認しておくことをおすすめします。
>>おすすめの介護求人サイト一覧
━━デイサービスやデイケアって運転免許なしでも働けますか?
運転免許がなくても、添乗員として送迎に出ることがあります。
私の施設では4人以上乗車できる大型ワゴン(リフト付きワゴン)については、運転手以外に添乗員をつけることとしています。
送迎中や利用者の自宅玄関までの送り届けの間に車内で利用者の急変があった場合に対処できることや、安全を守るためにも添乗員の役割は非常に大切と考えているためです。
また、送迎に出ない場合でも、施設内の清掃や翌日の準備など、様々な役割があると同時に勤務時間内で効率よく業務を行う必要もあるので、運転免許が無くてもやることはたくさんあります。
━━デイサービス(通所介護)の人員基準を教えてください
介護保険において通所介護の人員基準として示されている職種とその数は以下の通りです。
- 生活相談員(社会福祉士等) 1以上
- 看護師または准看護師 1以上
- 介護職員 利用者の数が15人までは1以上、それ以上5またはその端数を増すごとに1を加えた数以上
- 管理者 業務に支障ない範囲で兼務可能
例えば、「定員40名のデイサービス」では
- 生活相談員1名
- 看護師または准看護師1名
- 介護職員6名
- 管理者(兼務可)
で基準を満たしていることになります。
この人数は配置される最低限の人数を示していますが、当然1日40名の利用者を対応するのに、6名の介護職員では到底無理です。
実際には公休の職員のことも考え、最低でも12~15名の介護職員を採用しておかなければ安全にサービス提供を行うことが難しくなります。
━━デイサービス(通所介護)で働いて良かった点、悪かった点には何ですか?
働いて良かった点
・基本的な介護知識や技術が身につくだけでなく、薬の種類や名前、緊急時の対応など医療的知識も学べた
・沢山の利用者様からΓありがとう」という言葉をもらえた
・利用者様以外のお年寄りにも親切になった
・育児をしながらでも、子供が幼稚園や学校に行っている限られた短時間の間で働くことができる
・人前でマイクを持って大きな声で話すことが出来、度胸がついた
・送迎で自宅の生活環境を垣間見ることで、デイサービスでの必要な介護内容について考えを深めることが出来た
働いていてここが嫌だなと思った点
・自分の体型よりも大きい利用者様の介助による肉体疲労
・1日に対応する利用者数は40名程度でも、登録されている利用者は150名を超えるので、利用者それぞれの状況を覚えることが必要になる
・利用者同士の争いに巻き込まれる
・書類ごとが多いことから、業務時間内で終えることが難しい時がある
どの世界においても記録というのは大切ですが、特に介護の世界においては命に関わるリスクがあったり、介護保険に基づくサービス提供であることから、サービス内容の記録、同意内容が確認できる書類など様々求められます。
━━これからデイサービスに就職、転職を考えている人に
デイサービスを利用される高齢者は、それぞれ目的があって利用されます。
その目的に合ったお手伝いをするのが、私たちデイサービスの介護職員の役割であり、仕事です。
「日帰り」という限られた時間で、食事の提供やレクリエーション、入浴介助などの業務をこなす事は、働く人にとっては多少ハードと思えるかもしれません。
しかし、私たちが思っている以上に、「お年寄りにとってデイサービスに通うことは楽しみである」ということを知った時には、とても責任感とやりがいを感じました。
介護福祉士という国家資格以外にも、介護職員初任者研修、実務者研修を修了してデイサービスで働くということは、家族から見れば介護のプロとして見られることになります。
その中で担う役割は、食事や入浴などのいわゆる体に触れる介護のみならず、適切な記録や安全の確保、急変時の対応など様々なことに対応してく必要があります。
利用者がデイサービスを利用する為の手続き手順を理解しながら、居宅サービスの全体像の把握や加算要件に必要な書類の作成など、介護職員でも多くの事務作業なども求められてきます。
デイサービスは利用者にとって在宅生活を送る上で利用するサービスの一つでありますが、それを通して介護保険制度の全体像をとらえながら支援していくという視点は、デイサービスの介護職員であれど非常に大切なものです。