私が働いている知的障害者施設の仕事内容や給料、職場の実態についてお話します。
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━━障害者福祉施設とは、どんなところですか?
障害者福祉施設とは、何らかの障害を持つ方々に適した支援を提供する施設です。
身体障害者、精神障害者、知的障害者に対して、生活援助、身体介護、移動支援等を行ないます。
障害者のいる施設形態は様々で、
- 入所施設
- 短期入所(ショートステイ)
- デイサービス
- 就労施設
- ホームヘルプ事業
等、沢山の施設があります。
私が働く「知的障害者更生施設」は、主に知的障害と認定された30代から80代までの幅広い年齢の方々がたくさん入所されており、それぞれの障害の程度に合った支援を受けています。
皆さん知的障害を持っていらっしゃいますが、重度から軽度まで様々な特性を持っておられ、
- こだわりの強い自閉傾向がある方
- 衝動的な行動障害を伴う多動性障害の傾向を持っておられる方
- てんかん発作をお持ちの方
- 高齢のため認知症のある方
- 躁鬱などの精神障害
- 身体障害のある方
などの障害のある方が沢山います。
━━障害者施設で働く上で気を付けている点はありますか?
比較的軽度で日中の活動や洗濯物を一緒にたたむことなどができる方は「5人部屋」に入所され、昼夜寝たきりで独り言を話し続けているような方は個室に入居されています。
全く喋らない方、異性への執着が強い方、被害妄想が強く対人トラブルが絶えない方もいて、利用者一人ひとりの個性が強く、特別な制限を受けておられる方以外は自由にしていることが多いので、利用者間のトラブルに気を遣います。
5人部屋でも、他の利用者とコミュニケーションを取りながら入所生活を送れる方と、他の利用者が怖がって近づかないような問題行動を起こす方とが混在しているので、入浴などの移動で館内が慌ただしくなった時の接触には特に気を付けています。
あと、食事に使う食器類を隠し持ち、部屋で問題行動を起こすこともあるので、食器類の回収チェックは欠かせません。
他害、自傷行為などの強度行動障害のある方の受け入れもあるので、この辺は特に気を遣いますね。
外出できる方は軽度で、日中は就労施設に移動される方も多くいますし、また、軽度な方の場合は離れた部屋での支援になりますが、あまり抑制を強くすると問題行動も強くなる傾向にあるので、束縛感のない介助を常に心がけています。
新規で入所された方は施設の暮らしに慣れるまで大変な時期もあり、スタッフ一丸となって乗り越えなければならないので、チームワークが重要になります。
━━知的障害者施設で働こうと思った理由は何ですか?
ここで働こうと思ったきっかけは、以前仕事をしていた障害者自立支援センターで知的障害を持つ利用者と関わり、興味を持ったことです。
知的障害者と休日を利用して外出したり、知的障害児をその家族に代わって学校へ迎えに行き、宿題や入浴や食事の援助などをしていて、知的障害者の持つ純粋な明るさや、心が通じ合った瞬間に見せてくれる可愛らしい表情、どれもが愛おしく感じられました。
ですが、意思疎通がとても難しく、相手の心に壁を感じ「もっと勉強してみたい!」という思いで知的障害者施設に勤めることを決めました。
━━障害者福祉施設での介護スタッフの主な仕事内容を教えて下さい
介護員の仕事は主に、更衣や配膳、食事、入浴や歯磨きなどの基本的な「生活援助」や「指導支援」がメインになります。
掃除や片付け、洗濯、草むしりなどの活動もあり、軽度の方は見守り対応だったり、一緒に作業もしたりします。
ですが、重度の方は身体介護が必要になるので、排泄介助やオムツ交換、清拭更衣、食事介助、入浴介助、口腔ケアなどその日の状態に合わせて介助を行う必要があります。
マニュアルはあれど、その日の状態でやることも変わってくるので、臨機応変に対応できるスタッフが求められます。
障害者の介助で、一番危険なのが「入浴」で、ここは十分に注意して行う必要があります。
歩行が困難な方もいるので、ストレッチャーへの移乗は介護員数人で行います。
身体動作が徐々に低下している方も多数いるので、利用者個々の入浴介助の方法はスタッフ間でよく話し合い、泡で滑り事故などを起こさないように、どなたにも安全に入浴してもらえるように配慮しています。
入浴を楽しみにしている利用者も多くいらっしゃるので、お風呂は怪我のないよう、十分に気を付けなければなりません。
━━障害者施設での介護職員の1日の仕事の流れを教えてください
日勤 | |
08:30〜9:00 | 業務申し送り |
09:00〜10:00 | 朝の身支度、行為介助、排泄介助、正式、口腔ケア、バイタル(メンタル)チェック |
10:00〜12:00 | 日中活動支援(園芸、手芸活動)、掃除支援、食事準備 |
12:00〜13:00 | 昼食介助、口腔ケア |
13:00〜15:00 | 片付け、作業支援、活動見守り、排泄介助、リネン交換 |
15:00〜16:00 | 入浴介助 洗濯支援 |
16:00〜17:30 | 日報作成 業務申し送り |
朝出勤後、昨夜の申し送りがあります。
利用者の変化や、特に精神状態が良くない利用者の状態などの報告を受け、注意する点を出勤スタッフ全員で確認し合い、その日の行事予定や、作業支援の内容などを確認します。
この時に必ずメモを取り、事故防止を徹底しています。
記載はしていないですが、レクリエーションも行っており、季節ごとに色々なレクを取りいれています。
夜勤 | |
16:00〜18:00 | 業務申し送り、排泄介助、食事準備 |
18:00〜19:00 | 夕食介助、口腔ケア、片付け |
19:00〜21:00 | 就寝準備、排泄介助、更衣介助 |
21:00〜01:00 | 事務作業(報告書)、巡回、排泄介助、食事エプロンの洗濯など雑用、個別対応 |
01:00〜05:00 | 仮眠、巡回、排泄介助、眠れない方への個別対応 |
05:00〜06:00 | 排泄介助、巡回、個別対応、見守り |
06:00〜07:00 | 朝食準備 |
07:00〜08:00 | 朝食介助、口腔ケア |
08:00〜09:00 | 片付け、事務作業(報告書)、業務申し送り |
てんかん発作の対応や、排泄介助や更衣、清拭は時間帯関係なく常時対応で、夜になると活発になる方もおられますし、眠れなくて問題行動を起こす方へ服薬を促したりしますので、夜勤の休憩、仮眠はあってないようなものですね。
こだわりの強い方が多いので、習慣的に同じ時間に「電話をかけたい」など言われたりするケースが多く、個別に対応する場合が多いです。
特に危険な問題行動(オムツを食べるなど)の心配(過去未遂あり)がある方への巡回は頻繁にしなければなりません。
━━障害者福祉施設で働く介護スタッフの給料やボーナス事情について教えてください
勤める施設によってもだいぶ違ってきますが、障害者福祉施設の給料は、勤続5年の介護福祉士で手取り18万円〜28万円程度が一般的でしょう。
ちなみに私(勤続2年目、もうすぐ3年)の年収は、基本給18万円、資格手当1万円、ボーナスが年2回(1回30万円くらい)で年収360万円くらいになります。
給料は働いている介護施設と、これまでの介護経験、持っている資格が重要になり、勤続年数が長くなれば毎年少しずつ年収は上昇していきますが、大きな年収増加は見込めません。
給料に大きく反映するのが「夜勤」で、夜勤の回数によって給料は結構差が出ます。
うちの施設は基本的に、夜勤は週に1回ですが、辞めるスタッフが続き、人手が足りない時は夜勤が週2回の時もあります。
夜勤専門のパートの方は1勤務16000円です。
夜勤専従の介護求人に関してはうちよりも10000円近く高い給与を支払ってもらえる施設もあるので、少し安いですかね。。
昼間のパートは900-1000円になります。
━━障害者施設の求人募集の傾向や施設の種類について
~求人の傾向~
求人の傾向は、うちの施設もそうですが、社員採用がドンドン無くなってきていて、非正規雇用(パートや派遣)での募集が多いです。
最近は正規職員の採用もほぼ無いというか、募集も出してないみたいなので、正社員の求人募集は縮小傾向で、昼も夜もパート勤務や派遣の方ばかりです。
これは、特別うちの施設だけが募集を出していないという訳ではなく、他の施設も同じみたいで、他の障害者福祉施設でもパートの求人が多い傾向が見受けられます。
~施設の種類~
※夜勤のない施設
・障害者就労継続支援施設(A型)
雇用契約の可能な方が通所されます
・障害者就労継続支援施設(B型)
雇用契約の困難な方が通所されます
・障害者就労移行支援施設
就労に繋がる訓練をされます
・障害者福祉作業所
※地域の障害者福祉作業所いずれも上記のどれかにあてはまります。障害者の身体介助と作業補助が主な仕事で、昼間の通所施設です。就労のための訓練や作業などを行ないます。
・自立訓練障害者施設(生活訓練)
知的障害、精神障害の方が、自立に向けて生活の訓練をされます
・自立訓練障害者施設(機能訓練)
身体障害の方が自立に向けて生活の訓練をされます。※両施設とも通所施設です。 自立生活を目指した生活援助や身体介護が主な仕事です
・居宅介護障害者施設
・同行援護障害者施設
・行動援護障害者施設
ホームヘルプサービス、移動支援の提供が主な仕事内容です。自分の都合のいい時間帯に利用者宅で家事援助、身体介護を行ないます。障害者と一緒に出かける行動援護、同行援護もあります(映画や買い物、ゲームセンターなど)。視覚障害者移動支援もあり専門的な知識が必要な場合もあります。
・生活介護障害者施設
障害者デイサービスです。 昼間の障害者通所支援サービスになり、 食事や入浴などの生活支援と身体介助が主な仕事になります。 レクレーションや外出などで楽しみながら通所されます。
・児童デイサービス
学校終了後から通所する発達障害児のための支援施設で、 宿題、スポーツ、遊び、知育支援の補助が主な仕事です。
※ここから夜勤がある施設
・障害者施設入所支援
・共同生活援助障害者施設(グループホーム)
・宿泊型自立訓練障害者施設
・短期入所障害者施設
入所施設で、24時間介護を必要としており、障害者の生活援助、身体介助、作業補助が主な仕事になります。施設によっては、夜勤が絶対条件の所でない場合もありますが、基本的には入所施設になるので、夜勤業務を伴います。夜勤ができるなら正社員で、できない場合はパート・派遣勤務になることが多いのではないでしょうか。
・重度障害者等包括支援障害者施設
重度障害者に必要な支援を包括的に提供する施設です。 重度障害者に居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、就労支援などを提供しています。求人募集情報は、ハローワークやインターネットの介護求人サイトに沢山出ています。
~介護求人サイトでの募集例~
障害者福祉作業所 | 9時〜18時 土日休みで月15万円 時給900円〜1000円 未経験でも可 介護系資格手当あり 月1回土曜日出勤があり、地域のイベントに参加したりします |
NPO障害者自立支援センター | 7時〜21時の1時間から可 時給1300円 希望があれば夜勤もあり 22時〜7時 仮眠あり (利用者の個人宅での夜間介護) 無資格でもOK |
障害者デイサービスセンター | 9時〜16時 時給1200円 日曜定休日 無資格の方もOK |
放課後等デイサービス施設職員 | 10時〜19時 19万〜25万 日曜日、他週休2日 無資格、未経験大歓迎 介護福祉士手当あり |
障害支援グループホーム | 夜勤あり21万円〜28万円 夜勤不可ならパート勤務9時〜18時で時給1200円 夜勤のパート16時〜9時勤務で日給16000円 介護福祉士手当1万円 ※施設によっては早出、遅出、日勤、夜勤の勤務帯がある |
様々な施設形態の介護求人を探すなら、まずは専門媒体である介護求人サイトから検索する事をおすすめします。
正社員求人であれば「スマイルサポート介護」がおすすめで、派遣での就業をお考えなら「スタッフサービス・メディカル」が多くの方に選ばれています。
━━知的障害者施設で働いていて良かった点、悪かった点には何がありますか?
働いて「良かったな」と思うこと
- 色々な特性のある障害があると勉強になった
- 身体介護が得意になった
- 少々のことで動じなくなった
- 疾患などの対処も勉強になっている
- 自閉傾向の人とのコミュニケーションも取りやすくなった
- 障害者を怖がらなくなった
- 夜勤のお陰で緊急対応が身についた
- 希少難病にも詳しくなった
- 障害や疾患によって一番適切な対処ができるようになった
- 入浴介助が上手くなった
- どこの施設にも転職可能な技術が身についた
- 利用者の障害以外の個性を見出だせるようになった
- 心が広くなった
- 安心感のある介助ができるようになった
- 純粋な気持ちになれる
障害者施設で働いてみて、一番良かったというか身になったと思うのは、この先どこの介護事業所に転職してもやっていける経験(介護スキル)を手に入れられたことですね。
介護の世界で「正しい身体介護の経験」ほど価値のあるものはないと思うから。
あと、「障害者の個性を認められるようになった」という自分自身の成長はとても大きいと思います。
働いてみて「嫌だな」と思うことについて
- 夜勤で仮眠がとれない日が多い
- 「他害」を受けることがある
- 腰痛に悩むこと多し
- 言葉の意思疎通がとれないこともある
- 独特の雰囲気に慣れるのが大変だった
- 広い施設内を歩きまわるので疲れる
- 毅然とした態度が通用しない時「まぁ、こんな時もあるさ」と慣れて鈍くなる
入所施設なので、肉体的にキツイのは当たり前だと割り切っていますが、相手が高齢者とは限らないので、何より重いし、体に負担もかかるので、腰を痛める人も多いです。
障害者施設に限らず、介護と腰痛は密接に関係しているので、ちゃんとした介助方法を学ぶ必要があります。
他害については刺激せずに上手く対処すれば防げることも多いですが、未熟だと色々経験するかもしれません。
━━重度の知的障害者の支援で、仕事を長続きするためのコツやポイントがあれば教えてください
近頃、障害者施設で痛ましい事件が多発していますが、障害者に関わる事は仕事でなくても本当に大変で、身体障害者の介助は肉体的にも楽ではないと感じているスタッフも多いです。
障害者施設に勤めていると、閉鎖的な考えになりがちですし、利用者の悪い部分だけにフォーカスしてしまい、辞めたいと考える介護職員も少なくないです。
実際、私自身も仕事が辛くて辞めたいと思った時も何度かありました。
ですが、時々マッサージに行ったり、リフレッシュできる楽しみを定期的に作って、施設の外にいるプライベートの時間を大切にするようにしていたら、苦しい時もありましたが、楽しく続けられています。
施設には沢山の利用者さんがいるので、色々な出来事を右から左に流してしまいがちですが、なるべく利用者さんの個性や1つ1つの行動に目を向けるようにすることで、問題行動を未然に防ぐこともできます。
この時のポイントは、会話ができる人にはちゃんと会話で対応し、意思疎通できない方の場合はちゃんと観察する、たったこれだけです。
行動を観察し、コミュニケーションを取ることで、状態が悪い時が分かるようになり、問題行動や他害から回避するのにも大変役に立ちますし、ひいては仕事を長続きすることにも繋がっているのです。
━━これから障害者福祉施設に就職する人、今現在働いている人に
知的障害を持った利用者の方々は、好きで困難を抱えているわけではありませんし、みんな一生懸命生きています。
知的障害者は意思疎通が困難な分、自制も利かず、介助者は精神的にも肉体的にも辛い時もありますが、貴方がこの世で生かされているように、いらない命なんてなく、全てのものに生きる権利があります。
私自身、利用者さんに優しくできるよう、自分自身も思いっ切り笑って楽しんで、人間的な自分を解放するように意識して変えてきました。
私自身、元々、人と関わるの好きなんだけど好きじゃないという、相反する面があったので「わたしなんかに、この仕事が勤まるのかな?」と最初は不安でしたが、自分自身を開放していくことで、段々と楽しく仕事ができるようになりました。
これは仕事面だけでなく、家族や夫婦関係などでのプライベートでも役立っているので、こういうところも、この仕事をやって良かった点だと感じています。
また、障害者の介護に出会えたことで知識も介護スキルもかなり上達したんじゃないかと思います。
知的障害者施設での勤務経験で得られるものの中で、他を圧倒するのは「身体介護に絶対的な自信が付く」事です。
そして、「施設全体を見渡せる観察力」も身に付きます。
この2つのスキルがあれば、この先介護の仕事探しで困ることはありません。