「どの介護施設で働くか?」
これは非常に重要で、というのも色々な施設での経験がない人や、これから介護の仕事を始める人にとっては「どこで働いても同じじゃないの?」と考えがちですが、実は介護職とひとまとめにしても色々な介護の形があります。
介護の仕事は大きく2つに分けると
- まだまだ元気なお年寄りをケアする介護
- お看取りをすることが前提の高齢者の介護
の2つがあり、更に施設の形態ごとに、仕事内容も異なってきます。
ここでは「特別養老老人ホーム(特養)」と「介護老人保健施設(老健)」と「有料老人ホーム(有料)」の3つの施設の特徴から、あなたが働くならどの施設が向いているか?の参考にしてください。
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働くならどれが1番良い?特養、老健、有料それぞれの特徴を紹介
特別養護老人ホームの特徴
特養という施設の最大の特徴は「お看取りを行う」ことです。
他の施設でもお看取りは行われますが、特養ほど頻繁には起きません。
お看取りの仕事は、新人介護職にはとても辛い内容で、なにしろ昨日までお世話をさせてもらっていた人が、翌朝出勤したら亡くなっていた、そんな事態が起こるのが珍しくないのです。
もちろん新人介護職がお看取りの仕事を仕切ることはありませんが、それでも遺族への連絡や葬儀会社への対応など、関連業務は沢山あります。
特養の入居者は、これまでも症状が重い人が中心でしたが、制度が変わり、原則、要介護3以上の人しか入居できなくなりました。
要介護3は、7段階ある中で5番目に重い症状です。
よって、体位交換やオムツ交換が多く、力を必要とする業務がほとんどになり、特養の介護職は「慣れないとかなりきつい」と言っています。
夜勤もほとんどの特養で必須になっており、子供が小さいなど、家庭の事情があれば夜勤を免除してくれるところもありますが、それでも「夜勤は絶対NG」は通用しないと考えておいた方が良いでしょう。
特別養護老人ホームの給与は、中堅の介護職員の支給額で、月額20万円程度から30万円前後で、ボーナス(年間2カ月分から4カ月分が目安)はほとんどの施設で出る特徴があります。
介護老人保健施設の特徴
老健は、病院を退院した高齢者が「自宅復帰は難しい」と判断された時に入る施設です。
病院と自宅の間にある施設ということから「中間施設」と呼ばれているので、老健の入居者は、自宅復帰をすることを目標としています。
入居者の介護度は要介護1~5まで幅広く、必ずリハビリ職員がいて、ほぼ毎日、レクリエーションを含め何らかのリハビリが行われています。
また、医師と看護師がいることも老健の特徴で、これは、老健の入居者には医療的ケアが必要になるので、介護職には医療の知識も求められます。
ですので、「医療と連携した介護を学びたい」と考えている新人介護職が働くなら、断然”介護老人保健施設”がおすすめ。
夜勤の頻度は月3~5回程度で、給料も特養とほとんど違いはありません。
有料老人ホームの特徴
通称「有料」こと、有料老人ホームの最大の特徴は、富裕層向けから低所得者向けまで色々な施設があり、入居者の収入の幅が広いことです。
富裕層向けの有料だと、入居するだけで数千万円を支払わなければならないところもあるくらいです。
富裕層向けの施設では、入居者のことを「○○様」と呼ぶ決まりになっている有料もあるなど、介護職に高い接遇スキルを求めます。
部屋は個室で、風呂、トイレが完備されていることが一般的です。
一方、低所得者層向けの有料老人ホームは、個室であっても、風呂とトイレが共同のところがほとんどで、建物が木造である場合も珍しくありません。
仕事内容も、富裕層向けと、低所得者向けの有料老人ホームではかなり違います。
富裕層向けの施設では、一般的な介護に加えて、自立支援や介護予防も行われます。
例えば「オムツゼロ運動」もそのひとつです。
オムツを履かせないということは、入居者の排便のタイミングを介護職が把握し、それに合わせてトイレに誘導しなければなりません。
つまり、ベッドからトイレ、トイレからまたベッドまで、付き添う必要があります。
食事介助も、1人の介護職が2~3人に付きっきりで行います。
つまり、一つひとつの介護はゆっくり、じっくり行われます。
一方の低所得者向けの有料老人ホームでは、オムツゼロ運動を実行するにはかなり難しい状況と言えるでしょう。
これは施設の収入が少ない為、介護職を多く配置できないからです。
その他の介護業務でも、優先順位は「効率化」を求められることが多いのです。
ですが、低所得者向けの施設の介護が粗雑というわけではありません。
むしろ、低予算で最大の生活の質を目指すなど、福祉マインドが強いところも多く存在します。
「困っている人を助けたい」という気持ちを持っている介護職が多いのも、低所得者向け有料の特色です。
有料老人ホームで働く介護スタッフの給料は、施設ごとに大きな開きがあります。
夜勤の頻度に関しては、月1回のところもあれば、7回以上ある施設もあり、これは富裕層向けだから、低所得者向けだからというのは、あまり関係していませんが、給料に関しては、富裕層向け有料では支給で月額20万円~30万円前後のところも珍しくありません。
ですが、反対に低所得者向け有料では、新人介護職だと15万円程度のところも多いのが実態なのです。
【特養、老健、有料】3施設の特徴を5段階評価
特養と老健と有料の3つの施設について
- 仕事のきつさ
- 入居者の重症度
- 将来性
- 給料
を数字で表してみました。
特養 | 老健 | 有料 | |
仕事のきつさ (きつい5~1ゆるい) |
5 | 4~5 | 2~5 |
入居者の重症度 (重い5~1軽い) |
5 | 3~5 | 1~5 |
将来性 (ある5~1ない) |
5 | 5 | 1~5 |
給料 (良い5~1悪い) |
3 | 3 | 1~3 |
・特別養護老人ホームの総評
特養では、お看取り業務があったり、重症の入居者が多かったりと、大変な介護が展開されているので、仕事内容は楽ではありません。
ですが、特養は”社会福祉法人”という、いわば「行政のお墨付き」が与えられた法人が運営しているので、経営的には非常に安定していると判断し、将来性は高いと考えています。
・介護老人保健施設の総評
最近は老健で亡くなる人も多く「老健の特養化」という言葉があるほど、業務内容が特養と似てきているので、仕事のきつさは特養とそれほど違いはありませんが、老健の入居者の中には、自分ですたすた歩ける人や、将棋や囲碁といった、高い認知機能が必要なゲームを難なくこなす人も少なくないので、特養よりも楽だと言えるでしょう。
将来性が高い理由は、老健のほとんどは医療法人が経営しているからで、病院の経営は介護事業所よりうんと安定しています。
また、老健の介護職は、同僚の看護師から直接医療的な指導を受けられるので、スキルアップが望めるメリットもあるので、それも将来性に含めました。
・有料老人ホームの総評
有料は仕事内容や入居者の要介護度など、全てに関して幅が広いのが特徴です。
なので、「仕事がめちゃくちゃ楽」な有料も少なくありません。
重症度や給料は、運営会社によってかなり幅広いと考えてください。
将来性については、富裕層向け有料老人ホームならば安泰かと言うと、そうではありません。
富裕層向けの有料老人ホームは、運営コストもかかっているので、景気に左右されやすく、むしろ低所得者向け有料の方が、今後、需要が伸びる可能性があるのです。
特養、老健、有料。これから働くなら結局どれが良いのか?
3施設の特徴をご紹介してきましたが、実のところ、各施設に特徴があるので、「どれが1番良いのか?」を限定するのは難しいのが現状です。
ただ、「仕事の楽さで選ぶ」なら有料老人ホームか、介護老人保健施設。
「10年、20年、30年働けるかどうかの将来性を考えて選ぶ」なら特別養護老人ホームか、介護老人保健施設が有利です。
あなたが、「何に重きを置いて探しているのか?」でも答えは異なるので、一概に「1番のおすすめは○○です」とも言えないのが現状です。
ただ、施設毎の特徴を、ある程度でも理解しておけば、どれがいいのか?の判断基準になります。
給料に関しては、各施設毎に支払われる賃金は開きがあるので、求人票を比較してみてください。
つまり、それぞれ特色があり、職場の雰囲気も違ってくるのです。
ですから、就職・転職する際は、求人票からある程度絞って、最終的には施設見学してから決めると就職・転職に失敗しにくくなります。
実際にここで解説している内容は事実ですが、個々の職場の雰囲気までは把握しきれません。
なので、まずは職場を見学させてもらって、働きやすそうな施設かどうかを自分の目で見て確認してから選ぶようにしましょう。
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