サッカーの司令塔がミッドフィールダーであるように、介護の司令塔はケアマネージャーである。
そのように理解している人は多いことでしょう。
しかし、介護の現場からは「ケアマネが機能していない」という批判があり、「ケアマネ不要論」が論議されています。
ケアマネージャー(介護支援専門員)という「職」は廃止した方がいいという主張は厚生労働省にも届いており、問題視されているのが現状です。
本当にケアマネは必要ないのでしょうか?ケアマネ不要論について考えました。
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ケアマネ不要論がなぜ議論されるのか?理由を徹底解説
サービス提供責任者や老人ホーム施設長にとって厄介者になっている
介護職員の上司には「サービス提供責任者」や「老人ホーム施設長」などがいますが、こうした人たちも職員に指示をします。
つまり介護職員は
- ケアプラン
- サービス提供責任者の指示
- 施設長の指示
――の指示通りに動かなければなりません。
この3つはいずれも「利用者様のため」という目的を達成するためにつくられているので、介護職員は何の疑問も持たずに自分の任務を果たせばいいのです。
しかし、ケアマネジャー、サービス提供責任者、施設長の3者の考え方が統一されていないと、指示も違ってきてしまいます。
そうすれば、現場で働く介護職員は混乱してしまいますし、介護職員が混乱すれば、高齢者も困惑してしまうのです。
サービス提供責任者や施設長がケアプランを作れてしまう
介護職員が行う介護と、家族が行う介護が、決定的に異なるのは「やることが決まっている」という点です。
家族による介護は愛が出発点なので、介護をする親族は「心のままに」高齢の家族を支えることができますが、仕事としてやっている介護職員の場合は「ケアプラン(居宅サービス計画書)」に書かれてある指示通りに行わなければならないルールがあります。
ですが、、
ケアマネージャーが作ったケアプラン通りに介護をすると、介護高齢者の幸せが実現できない(※一部)ので、現場の責任者であるサービス提供責任者や施設長が別の指示を出す。
――こうした事態が介護現場では頻発しているのです。
どうしてこのような事が頻発しているのかというと、介護現場のことも、利用者本人のこともよく知らないケアマネが増えているからです。
現場感ゼロのケアマネが作ったケアプランははっきり言って使い物にならないので、現場の監督者であるサービス提供責任者や施設長は「独自の利用者のためのプラン」を作り、スタッフに指示しているのです。
しかし、法律上ではケアプランはケアマネが作らなければならないルールになっているので、ケアマネがサービス提供責任者や施設長が作った「独自の利用者のためのプラン」を参考にしてケアプランを作るという、わけの分からない逆転現象が起きてしまっているのです。
このような事があるので「ケアマネがいなくても介護の仕事は回るのではないか?」という声が強くなりました。
>>サービス提供責任者とは?仕事内容や給料について
利用者の容態や現場の事情を考慮していないケアプランをつくるケアマネがいる
ケアマネの業務を行うには、原則
- 実務経験5年
- 介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の合格
- 介護支援専門員実務研修の修了
の3つの関門を突破する必要があります。
また、多くのケアマネは、介護福祉士の資格を取得した後にケアマネ資格を取得します。
本来は、ケアマネと介護福祉士の仕事は別物なので、どちらが上でどちらが下ということはないのですが、介護の現場には「ケアマネは介護福祉士の上位の資格」という意識があります。
「上位の資格保持者」としてふるまうケアマネが、利用者の容態や現場の事情を考慮していないケアプランを作ると、「ケアマネがいるとかえって介護の仕事が回らない」「ケアマネがいない方が仕事がうまくいく」ということになり、ケアマネ不要論が生まれているのです。
厚生労働省も困っている?『今後のあり方検討会』とは
厚生労働省には「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」という、指揮者会議があります。
そもそもこのネーミングからして「国もケアマネにネガティブなイメージを持っているのでは?」と思わせます。
この検討会が2013年に中間報告を厚生労働大臣に提出しましたが、そこではズバリ「根本的なケアマネジメントの在り方の検討が求められている」と、厳しく指摘されています。
ケアマネジメントとは、ケアマネ業務の全体を指しています。
ケアマネの仕事は、介護を必要としている高齢者に接触して、「どういう状態にあるか?」「どのような介護が必要か?」「介護以外に必要な支援は何か?」を探すことから始まります。これをアセスメントといいます。
「必要な介護」と「必要な支援」が決まったら、介護や支援を提供する人を見つけ、その人たちと介護高齢者を引き合わせ、ケアプランが確定し、介護や支援が提供されるのですが、これでケアマネの仕事が終了するわけではありません。
高齢者に対して介護サービスを受けた後のモニタリングまで行わなければなりません。
↓
必要な介護の洗い出し
↓
サービス担当者会議
↓
介護の提供
↓
モニタリング
――この一連の流れがケアマネジメントになります。
介護保険制度のスタートは2000年で、この中間報告は2013年に出されています。
つまり、スタートから10数年経過してこれまでのケアマネの業務を検証した時に、「ケアマネジメントが十分でなかった」とあり方検討会は見ているのです。
あり方検討会の厳しい意見はそれだけではありません。
利用者の状態や介護課題に応じた適切なアセスメントが十分でない |
モニタリングと評価が十分でない |
施設におけるケアマネの役割が明確でない |
医療サービスを介護高齢者に提供していく必要性は今後さらに高くなるのに、医療との連携が十分でない |
サービス担当者会議が十分に機能していない |
ご覧のように微に入り細に入り駄目出しされています。
優秀なケアマネとダメなケアマネが混在しているから不要論が生まれている
それでは「ケアマネは本当に不要なのか」と問われたら、関係者はなんと答えるでしょうか?
きっと「いや、やっぱりケアマネは必要だと思う」となるでしょう。
それは介護の仕事をしている人も、介護を受けている高齢者も、高齢者の家族も、少なくとも一度は「ケアマネに救われた」という経験をしているはずだからです。
つまり、「良いケアマネ」と「そうではないケアマネ」の両方が存在していることが、ケアマネ不要論を生んでいるのです。
つまり「そうではないケアマネ」が→「良いケアマネ」に成長することで、当事者と関係者の全員が納得できる介護が実現できるのです。
必要とされるケアマネになるにはスキルアップが重要
それでは具体的に、これからのケアマネには何が求められているのでしょうか?
これもあり方検討会の中間報告に答えがありました。
1:急変で入院が必要になり、結果として「本来のケアマネ業務」から外れる場合でも、ケアマネが関係者との調整役を果たしていくこと |
2:ケアマネは介護保険制度に関する知識だけでなく、保健・医療・福祉に関する幅広い知識や技術が求められる |
3:ケアマネは、認知症、リハビリテーション、看護、福祉用具の知識を身につけておくべきである |
4:介護高齢者の生活を総合的にとらえ、ニーズに応じた様々なサービスを一体的に提供するコーディネーターとしての役割 |
5:自立支援では、身体機能の維持・改善に限定して考えるのではなく、利用者の意思、意欲、QOL(生活の質)の向上にも留意すべきである |
あり方検討会も「ケアマネは、その理念を実現する中心となる資格であり、利用者の立場に立って、その生活全般に寄り添って支援を行う機能を果たしてきており、介護保険制度創設から10 年以上が経過した現在、国民の間にも定着し、要介護者等にとって欠かせない存在となってきている」と断言しています。
「ああいうケアマネは要らない」と言われない存在になることが今後はより重要視されるんじゃないでしょうか。
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