介護現場で「モンスターファミリー」化する家族の実態と対応方法

介護保険制度が2000年に開始され、既に20年近くが経とうとしていますが、近年では、介護サービス利用者の「家族」が施設側に無理な要求や、自分勝手な要求をしてくる「モンスターファミリー」問題が露呈してきています。

「こっちはお金払っているお客でしょ!」
「他の高齢者はそっちのけで、とにかく自分の家族を1番に考えてほしい!」
時には自分たちの都合で「時間外の労働まで強要してくる」

こんなご家族の方に悩まされているケースって、結構多いんじゃないでしょうか?

実は、このようなモンスターファミリー化した家族の行き過ぎた問題行動や数々の苦情に、悩まされる介護事業所や介護職員は少なくありません。

クレームや苦情は私たち介護職員の「心の負担」でしかないので、うまく解決しておきたいところ。

ここでは、介護現場におけるモンスターファミリーの苦情や問題行動の実態(体験談)と、その対応方法について紹介させていただきます。
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「モンスターファミリー」化する家族の実態

実際にあった

  1. 「家族からの「苦情」や「はい??」と思うような苦情・クレーム・出来事」
  2. 「その介護職員が実際にどのように対応したのか?」
  3. 「また、対応後どうなったのか?」

の事例を紹介します。

「頻繁に部屋替えを希望される」

利用者家族の方に、個室利用は別料金が発生するから「個室は利用しない」と言いながらも、頻繁に部屋替えを希望されました。

その利用者さんと、同室の利用者さんとの関係は悪くはなく、ご本人から希望はなかったので、家族特に「奥さま」のこだわりが強かったように思います。

1番最初は、「窓が近いところに移動したい」との希望で、そういった希望を出す利用者さんは少なくないので、空き次第移動する約束をしました。

少し経ってタイミング良く窓際が空いたので、部屋を移動したら、その時は、お礼を言われたのですが、移動したら移動したで、

「他の利用者さんの出入りが多いので違う部屋に行かせたい」
「音が気になってゆっくり休めないから違う部屋に行かせたい」
「誰もが自由に利用できる憩いの場の近くに行かせてほしい」

など、何度も部屋の移動を希望されて困りました。。

他の利用者さんとの兼ね合いもあるので、先に部屋を見てもらって移動しても、結局変わりません。

部屋移動は「毎回ご家族のご意向にお答えすることは難しい」とは伝えましたが、嫌な顔をされただけで、奥さまとしては未だに不満そうです。

 

「自分の家族が1番」

介護を必要としている入所者の家族の中には理不尽なことを言う人がいますが、その中でも一番多いのは、「自分の家族を一番に考えて欲しい」と言う、介護の要求です。

しかし、私たちが介護を行う上で重要なのは、「入所者は平等にすること」が大切です。

一人お入所者の家族がそのように言ってきたからと、要求通りに答えてしまうと、場合によっては増々要求が多くなります。

そのため、施設全体でこの問題を解決するために、まずは「家族の要求」についてじっくり聞くことにしました。

色々な苦情の事例を見ていると、多くの場合は、「家族の感じているストレス」を聞くことで、問題を解消することができるケースが多いのです。

家族自体がストレスを感じていて、そのストレスをこちらにぶつけているという感じです。

介護は長期戦になるので、ご家族の心労も大きいのです。

ここをくみ取ってあげることが重要だと感じ、まずはじっくりとご家族の話を聞き、コミュニケーションを多く取るようにしています。

 

「レクリエーションがつまらない」

色々なレクリエーションを行っていますが、ある日、利用者さんを家に送って行った時に、家族(奥さん)の方から

「いつも、つまらないレクリエーションやっているみたいですね。もしかして、ただお金を取れれば良いとでも思っているんですか?もっと楽しめるようなものを考えたらどうですか?レクリエーションがつまらないせいで、もう行くのが嫌になってきたと言っているんですから。」

と、すごい強い口調で言われました。

私は「すみません。スタッフ一丸となって、もっと楽しめるものを考えていきます。」とその場ではすぐに頭を下げましたが、実際はかなりバリエーションも豊富だと思います。

ですが、もう一度しっかり見直すために、施設に戻ってから、すぐにこの件を上司に伝え、急遽ミーティングを行い、みんなでレクリエーションの案を出し合いました。

その後、今までと全然違ったレクリエーションをやったら、あのクレームを言ってきた家族から「お陰様で、楽しい!楽しい!と本人が言っていますよ。これからも宜しくお願いしますね。」と笑顔で言われたので、何とかなりましたが、もう少し優しく言ってくれてもいいのにと、心が疲れました。

 

「始業時間前の仕事を要求してくる」

デイサービスセンターの職員として働いていますが、認知症を患っている女性の利用者様のお話です。

その方のご家族は、二世帯住宅にお住まいでしたが、家庭内別居状態。

利用者の女性の息子様が全てのお世話をなさっている状況でした。

私たちの仕事は午前8時から開始し、そこから車を出してそれぞれの利用者のお宅へ訪問し、お迎えしてデイサービスセンターまで送り届けて、運動、食事、入浴サービスを提供しています。

朝8時前に出社して、8時から仕事を開始して車を出すのですから、もちろん利用者のお宅へ8時までにお迎えに上がるという事は無理なのですが、「どうしても8時までに迎えに来て欲しい」と言われました。

 

つまり、「仕事の開始時間よりも早く出勤して、家に8時までに迎えに来い」(あなたたちの都合は関係ない)というのです。

 

介護士不足だと騒がれている世の中ですが、デイサービスセンターは沢山あるせいで、今やお客様の取り合いをしている状況。

なので、今このご家族の要望を断ってしまったら、他のデイサービスを利用すると言われたので渋々了承しました。

毎日利用される方だったので、約束してからは、毎日誰かが早出をして迎えに行っていました。

もちろん早く出勤しても、お給料に反映されることはありません。

ご家族の反応ははっきり言って「こんなことはやって当たり前」という感じなので、腹が立ちます。

実際、「お金を払っているんだから、それ位して当然でしょ」と言われました。

要求は徐々にエスカレートし、終いには8時だったのが、「7時40分までに迎えに来て欲しい」と言われるようになり、無理な時間でも迎えに上がっていますが、正直もう少し感謝の言葉を述べてもらいたいのが私たちの本心です。

 

実は、そのモンスター一家は、利用者様の女性を早く家から追い出したいみたいで、お迎えの時間が早くないと文句を言う状態。

「ありがとう」も「お願いします」も何も言わず、追い出して終わりという感じの対応です。

サービスを提供する側としては、ある程度までなら目を瞑りますが、ここまで酷いと迷惑でしかありません。

 

「介護タクシーは面倒だから、施設の車を貸してほしい」

外出するので施設の車を貸して欲しいと一方的に言ってきました。

入所されている本人を外出させるために、「介護タクシーに依頼すると面倒だし、何よりお金がかかる」という理由みたいです。

勿論、保険の関係もあるし、そのようなサービスはしていない事をご家族の方に伝えましたが、「減るものではないだろう」「貸してくれるぐらいいいだろう」と顔を真っ赤にして怒っていました。

現場レベルでは対応できなくなったので、「施設長に相談します」というと「そこまでする必要はない・・」と急に冷静になり帰って行きました。

何となく感じたのは、「言ってできるなら、少しくらいうるさく言わなきゃ損」というような感じにも思えました。

その家族はいつも、自分の要望を一方的に職員に言ってくるので注意していますが、なかなか改善しません。

 

「中には脅し・犯罪まがいの行為も」

3年ほど派遣で介護をしていますが、その中で一番モンスターファミリーだと感じたのは、要介護3アルツハイマー型認知症の方で、認知できる時とできない時の差がとても激しい人のご家族です。

ある時、入居者が「財布がない!」と激しく暴れました。

落ち着いてもらい、話を聞くと、15分前まではあったというのです。。

しかも、財布の中には2万円も入っているというのです。

「なんでそんな大金持たせるんだ…」とも思いましたが、とりあえずスタッフ総出で探しました。

しかし、どんなに探しても財布はなく、紛失したことをご家族に電話で伝えました。

 

すると、「あれは母がずぅーっと大切にしてきた財布なの。無くしたなんて許さないわよ!!」と怒鳴り倒す始末。。

 

元々、色々な事にいちゃもんをつけてくるご家族だったので、スタッフは皆焦っていました。

一時間探してもなく、みんな冷や汗を流していると、入居視者のご家族が来訪され、怒った顔でこう言いました。

 

「20万で許してあげるから今すぐ用意して!」とブチ切れ状態。。。

 

主任も、「、、もー金渡すか…」みたいに投げやりな感じになっていましたが、ここでまさかのどんでん返し。

勤めている施設は個室以外にはカメラが設置されていますが(暴力などの行為等を見逃さないために)、駐車場で入居者の財布をご家族の方がポケットに入れている瞬間をカメラが抑えていたのです。

施設長が「すみませんが映ってますよ。」と伝えたところ、「証拠を出せGあsふぃさ」と訳の分からない奇声を発し、その場を出ていき、その後すぐに、そのご家族は、何もなかったかのように、退所されました。

キレる高齢者の実態を紹介します

どのような対応が介護職に求められるのか?

上記に紹介したように、なにかといちゃもんをつけてくるモンスターファミリーは少数ですが、いらっしゃるのが事実。

「うちの父親は言葉ではうまく言えないが、本当はもっとこうしてほしい!」

「なんでこんな事もやってくれないのか?私たちは客だぞ!(お客様は神様発言)」

など、理不尽な文句や苦情を言って私たちを困らせてきますが、、、

 

あなたが実際にモンスターファミリーに苦情を言われたら、どのように対応すれば良いのでしょうか?

 

対応方法のポイントは「4つ」


1 家族の話(意見)を聞き、心情を理解する

「家族側の要望は何か?」「何に対して不満があるのか?」

まずは、ここをしっかり把握する必要があります。

苦情を言ってくるご家族は、何かしら不満を抱えていますが、特に怒りを買うのが

「こっちの事情を理解してくれない」

「事務的に扱われた」

だったり、ご家族の意見を最初から否定してしまうと、怒りの感情を買いやすいです。

 

だからこそ、まずは「聞く」に徹する。

 

そして、ご家族の要望は、できる範囲のものなのか?を見極め、解決方法をこちらから提案する。

出来る範囲を超えたものの場合は、施設長など、上の人間と一緒に説明するのもポイントです。

何らかの解決策が見つかり、それでご納得いただけるようなら、再度確認の意味で口頭で説明して、確認を取りましょう。


2 介護事業所・介護施設全体で問題解決に取り組む

基本的に、文句を言ってくる家族というのは、あなた個人をターゲットにされているケースはほとんどなく、介護事業所や介護施設全体の問題点を指摘しているケースが多いです。

ですから、もしもモンスター化している家族がいるのであれば、問題解決は担当している介護スタッフだけでなく、施設全体の問題点としてとらえるべき。

リーダーや介護スタッフなど全員で会議を開き、どのように対応していくべきか?を真剣に考えるべきです。

全スタッフで解決する行為は、職員を守る行為でもありますし、今後のモンスターファミリーの対応にも役に立つので、ここは上に立つ人間がしっかりと対応するようにしましょう。


3 迅速に対応し、2重クレームは絶対に出さない

クレームを受けた際は、迅速に対応することも大切です。

「再度、確認してこちらからご連絡させていただきます。」

と伝えていても、数日も待たせていたら、「いつまで待たせるんんだ!!」と2重クレームになりかねません。

その日に解決できる問題なら、即日解決を目指し、即日が無理な場合は、「いついつまでに回答します(できるだけ短期間)」というように期日を切っておくと、2重クレームは起こりにくいです。

無理難題な事柄でも、後日に説明日をしっかり設けたり、その場で施設でできる事、できない事を、ちゃんと説明しておくと良いでしょう。


4 こちらに落ち度がある場合は素直に謝罪する

モンスター化するくらいなので、こちらに落ち度がある場合は少ないでしょうが、自分たちが悪い場合は、すぐに謝るのが鉄則です。

ただ、事業者の方針によっては「何でもかんでも謝ってはいけない」となっている施設もありますが、このような決まりがないなら、迷惑をかけてしまったということに対して素直に謝罪するべきです。

頭を下げている人間に、人は強く言えません。

下手に出ると、エスカレートして声を荒げて文句を言ってくる人もいますが、ずっと頭を下げてると、次第に何も言ってこなくなります。

家族の気持ちを逆撫でしないためにも、あらたまった感じでなくてもいいので、謝罪はしておくべきです。

謝罪するという行為は、実は自分たちを守る行為と同時に、クレームを解決するための最善の方法でもあるのです。

介護職員のクレーム対応のポイントは?


モンスターファミリーを今後出さないためにどうすればいいのか?

苦情の原因の多くは説明不足や、ご家族の希望と異なるケースから生まれます。

入所される時に説明はしているはずだけど、家族の方が理解していなかったり、娘さんだけが話を聞いている場合は、息子さんから「そんなことは聞いてない」と、クレームが入ってしまうこともあります。

ですから、常日頃からの利用者さんだけでなく、ご家族との関係性も介護職は意識しておく必要があります。

 

「よく話し合えば、ものすごく良い人だった」

 

こんな経験仕事以外にもきっとあると思いますが、関係性によっては、誰しもモンスターファミリーになる可能性を秘めているのです。

 

ですが、「誰もクレーマーになりたくてなっている」訳ではありません。

苦情を言うクレーマーも疲れるので、本当はそんなことしたいとは思っていないのです。

しかし、もどかしい気持ちのあまり、声を荒げてモンスターファミリー化してしまうのです。

  • 家族の不満は何か?
  • 何をどう解決したいのか?
  • それはこの施設で対応できる範囲のものか?

問題を細分化し、どのように対応すれば良いのか?を施設全体の問題として取り組む。まずはこれが1番大事。

モンスター化する問題は、なにも対応している介護職1人の問題ではありません。

どちらかというと、施設全体の問題点・クレーム・苦情なので、全職員でしっかり話し合い、解決方法を模索することが大切です。

介護職の離職率の現状は?

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