介護離職ゼロなんて無理じゃないの!?本当に可能なのかを考察

日本は超高齢化社会を迎えており、家族の介護問題は多くの人が悩みを抱えていますが、家族介護の大きな問題として介護のために会社を辞めざるを得ないケースがあるのです。

「お母ちゃんが認知症になった」
「親がアルツハイマー病になった」

ずっと若いと思っていた父や母も老いて、介護が必要になる時が必ず来ます。

親や親族の介護のために離職する方は”年間10万人以上”とも言われており、社会的な損失は非常に大きく、社会的な問題になっています。

国策として介護離職ゼロが新3本の矢でも謳われていますが、「そんなの無理だろ」という声も多数ありますが、実際に介護離職ゼロの実現は本当に可能なのでしょうか?

もしくは実現不可能な”ただの理想論”となっているのでしょうか?

介護離職ゼロは本当に実現可能なのかを、現場にいる介護職員の目線から考察しました。
スポンサーリンク

実際に介護現場で働いていて分かること

筆者は実際に介護福祉士として介護現場やケアマネージャーとして働いてきた経験がありますが、介護が必要になった際の家族へのケアというのは非常に選択肢が少なく、働きながらでは、とてもじゃないですが介護をしていくことは難しいと感じています。

会社を辞めないと親の介護は難しいと考える理由としては「入所施設の空きが少なく、簡単に預けられない」ということです。

老人ホームの中でも最も多い”特別養護老人ホーム”は常に待機待ちで順番待ちができていますし、一時的な預かりである”ショートステイ”ですら、満床のところがほとんどで、介護サービスは本人だけでなく、家族のケアも目的としているのですが、その介護サービスを満足に使うことが出来ないのが現状なのです。

訪問介護やデイサービスなら、入るのに待ちはありませんが、どちらも基本的には24時間対応してくれるサービスではありません。

ですから、訪問介護やデイサービスは、仕事をしているご家族の方がフルタイムで働くことが出来るサービスとは言えないのです。

認知症であるか?そうでないか?は非常に重要

427740何が原因で要介護状態になっているのか?という点は非常に重要で、例えば、足の骨折や加齢の為に寝たきりになっている場合は、思っている以上に手がかかりません。

骨折や加齢での寝たきり状態であれば、高齢者自身が放っておいたら勝手に家から出て行ってしまうという事もないので、ある程度介護者のペースで介護が出来るので、訪問介護を利用したり、デイサービスを使ったりすることによって、ほとんどの場合は仕事を続けながら介護を実施することができるのです。

しかし、問題となるのは認知症で要介護状態になった高齢者です。

認知症の場合は「徘徊」「記憶障害」「見当識障害」などの症状が出ていることが多いので、一人で出歩いて事故にあう可能性もありますし、火事を起こしてしまう、詐欺被害にあうなど様々な危険性があるのです。

認知症やアルツハイマー病の場合は常に人の目が必要で、文字通り24時間介護が必要です。

親の介護のために会社を辞めなければならない人の大半が、認知症高齢者を自宅でみている人。

親が認知症の為に目が離すことが出来ない、施設にも入れることができないといった状況に陥ってしまえば、24時間介護が必要になるので、たとえ長年勤めた会社であっても面倒をみてくれる人がいなければ離職せざるを得ないのです。

認知症の在宅介護は本人以上に面倒をみる家族への負担が大きく、最悪の場合は無理心中で命を落とされる方もいますので、しっかりと周りがサポートする必要があります。

介護休業取得率の低さから思うこと

434089介護休業は要介護状態にある家族を介護をするために取得できる休暇のことで、通算で合計93日間休みを取得する制度です。

この制度は育児休暇と違って、まだまだ浸透しておらず、社会的認知度も低く取得実績が非常に少ないです。

どの位なのかと言うと、介護休業を取得したのは、全体のわずか3%と非常に取得率が悪いのです。

この介護休業取得率3%という数字が物語っている通り「介護休暇を取ると会社に迷惑をかけることになる」「企業自体が介護休業について取得を推奨をしていない」という介護休業の取得のしにくさや認知度の低さが分かります。

介護離職ゼロにすると国が政策を打ち出して、介護休業についても明記していますが、実際は介護休業を使っている方はほとんどいないのです。

介護休業を取得してしまうと、男性であれば出世などに影響をする可能性も否定できませんし、女性の場合は最悪会社に居辛くなる可能性もあり、現実的には休みをもらう事はそう簡単ではないのです。

介護離職ゼロは難しいが、離職者を減らすことはできる

435189介護休業の取得状況を考えると、現段階では介護離職ゼロという政策を完璧に達成するのは難しく、介護の為に会社を辞める人が0になることは可能性が極めて低いと思いますが、現在の10万人に上る介護離職者を減らしていくことは十分に実現可能で、全く無理な政策ではありません。

現在は高齢者の数も増加すると共に介護施設も数多く新設されており、特別養護老人ホーム以外でも、サービス付き高齢者向け住宅など様々な形態の介護施設ができてきて、要介護の高齢者の受け皿が増えてきています。

また、介護保険のサービスでも24時間対応の訪問介護も充実してきていますし、在宅でも家族の力を借りずに介護サービスで生活できるようになってきました。

後は、国が介護休業の制度をしっかりと取得できるように企業に働きかけることによって、介護休業の取得が行いやすくなり、介護の為に会社を休むことへの抵抗をなくしてもらう取り組みをすること、そして介護職員の処遇改善を行う事が重要になります。

介護は終わりの見えないことで、それに対して心身共に疲労を感じてしまう、同時に仕事のこともあるので余計にストレスを感じてしまうといった声が非常に多いのです。

身内に70代、80代、90代の高齢者がいる方はもちろんですが、将来的に自分が介護をされる立場になった時に、家族に介護をしてもらえるように国全体で意識を高めることによって、現在よりも介護離職者が減るんじゃないでしょうか。

スポンサーリンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページ上部へ戻る