厚生労働省は
- 認知症ではない介護高齢者向けの介護
- 認知症の介護高齢者向けの介護
の2つをを分けて検討していますが、この理由は、認知症の方へのケアがとても大変だからです。
認知症ケアの困難さは多数ありますが、ここでは、介護職が非常に手を焼く「物盗られ妄想」について、その実例と原因、対応策についてご紹介させていただきます。
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物盗られ妄想とは?
物盗られ妄想とは、認知症の高齢者が、本当は盗まれていないのに「自分の物が盗られた!盗まれた!」と訴える症状です。
認知症の原因となる病気の内、アルツハイマー病の患者や統合失調症によく見られるのが特徴です。
物を盗られたと妄想する人が、盗難被害に遭ったと思っている対象物は、現金、財布、通帳、印鑑など重要な物が多く、しかも、妄想上の犯人に仕立て上げられるのは、家族や介護職など、身近な人であるケースがほとんどなので、介護現場は混乱します。
実際に介護現場ではどのような事態が起きているのでしょうか?その事例を紹介します。
認知症高齢者による物盗られ妄想の実態を紹介
被害妄想が酷いのにはどんな原因があるのか?
物盗られ妄想を引き起こす原因の元になるのは、主には認知症や統合失調症、アルツハイマー病が一般的。
ですが、症状を悪化させる要因・原因は他にもあり、認知症の薬を製造販売している会社によれば、性格や生活歴、社会的要因、経済的要因も大きく関わっていると言われています。
つまり、前提としては病気が引き起こしているのが最もな回答ですが、その病気を引き起こす原因としては個々に違うので、何か1つに特定するのは非常に難しいのです。
認知症でない人は、物が見付からない状態になると「どこに置いたっけ?」と考えますが、認知症高齢者の場合は、自分が物を無くしてしまった可能性について考えることができません。
なので、「物が見当たらない=盗まれた!」と発想してしまうのです。
物盗られ妄想が酷い利用者への対応策は?
盗難被害の対象にされてしまった介護職員は、この問題を軽視するのではなく、適切な対応策を練る必要があります。
対応策を考える上で、最もやってはいけない対応は、「認知症高齢者を厳しく注意したり、叱責したりすること」です。
そもそも認知症高齢者は注意や叱責の意味を理解できません。
なので、お年寄りの言動を修正すること自体が無意味ですし、注意や叱責によって認知症高齢者の悪感情は更に膨らみ、妄想被害はより強まってしまうので、認知症高齢者への注意や叱責は、「百害あって一利なし」と覚えておきましょう。
高齢者からの対象になってしまった介護職は、自分で解決しようとはせずに、すぐに上司や管理職や施設長に報告してください。
その際、感情的にならず、
①いつ
②どこで
③介護職が何をしていた時に
④認知症高齢者がどのような発言をしたのか
――※この4点を説明できるようにしてください。
また、管理職や施設長など責任ある立場の人は、被害妄想が激しい症状が出ている高齢者が、まだ認知症と診断されていない場合は、家族に報告すると同時に、すぐに精神科を受診させてください。
家族に伝える際は「物を盗ったと妄想被害を訴えられている」と決め付けてはいけません。
このようなケースで家族に伝える際は「私たちは被害妄想が激しくなっているのだと思うのですが、もしかしたら○○さんの物が見当たらないのは、当方の事故かもしれないので内部調査を行います。しかし認知症を発症していたら適切な対応策を考えないとならないので、精神科に受診させてください」と伝えると良いでしょう。
冷静に「病気がそうさせている」と考えよう
物を盗られたという認知症高齢者の妄想では、誰かが犯人に仕立てられることになるので、傷つく人が出てきます。
しかし、認知症高齢者の立場に立って考えてみれば、「お金を盗られた」「誰も信じてくれない」と苦しんでいるわけなので、犯人扱いされた介護職も、認知症高齢者を恨んだり憎んだりすることなく、まずは冷静に対処してほしいのです。
それには、認知症やアルツハイマー病や物盗られ妄想について、正しい知識を身に付けておく必要があります。
「病気がそうさせているだけで、この人も被害者なんだ」と心に余裕を持ち、思いやりを持って対応できる介護職員を目指しましょう。
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