【比較】医療法人と社会福祉法人の違い|介護職が働くならどっちがおすすめ?

介護職の仕事は、たくさんある介護施設や介護事業所から自分に合った職種を選びます。

ですが、求人票に記載されてる運営母体で、「医療法人」「社会福祉法人」という項目を見たことはあると思いますが、両者の違いがわかる方はいらっしゃいますか?

大まかな違いはなんとなく理解できていても、2つの法人の違いが、私たち介護職員にどのような影響があるのかまでは知らないのではないでしょうか。

「仕事内容に違いは出てくるのか?」

「給与はどっちがいいのか?」

など、就職活動をしている人にとっては重要なポイントですよね。

そこでこの記事では、医療法人と社会福祉法人の両者の違いをまとめてみました。就職や転職をお考えの方は職場選びの参考にして下さい。
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医療法人と社会福祉法人って何が違うの?違いをまとめてみた

医療法人について

医療法人とは、医療法に基づいて設立された法人で、『病院または診療所、介護老人保健施設を開設する社団または財団』です。

 介護業界における代表的な医療事業

  • 「老人保健施設」
  • 「病院が併設された特別養護老人ホーム」
  • 「病院が併設された有料老人ホーム」など

「医療法人」とは、その名称の通り病院が密接な関係になっているのが特徴です。

社会福祉法人について

社会福祉法人とは、『社会福祉法に基づいて社会福祉事業を行う目的として設立された中間法人(特別法人)』です。

介護業界においての社会福祉事業の代表的なものとしては、高齢者を対象とした各種福祉施設が『社会福祉事業』と呼ばれています。

さらに、社会福祉事業には『第1種社会福祉事業』『第2種社会福祉事業』に分類されます。

 【第1種 社会福祉事業】

運営適正を欠いた場合、利用者への影響が大きいため、社会的擁護の必要が高い事業

主として入所施設サービス

  • 「特別養護老人ホーム」
  • 「養護老人ホーム」
  • 「軽費老人ホーム」など

 

 【第2種 社会福祉事業】

事業の実施に伴い、利用者への影響が比較的少なく、公的規制の必要が低い事業

主として在宅・通所サービス

  • 「デイサービス」
  • 「老人短期入所施設」
  • 「老人福祉センター」
  • 「老人介護支援センター」など

組織・資産などによる違い

社会福祉法人(社会福祉法) 医療法人(医療法)
目的等 社会福祉事業 医師・歯科医師が設立
設立規制 所轄庁の認可 都道府県知事の認可
理事 6人以上 原則3人以上
監事 2人以上 1人以上
任期 2年以内 2年
資産要件(土地・物件) 物件の所有権又は貸与 土地または建物を所有
(資金) 1億円以上の資産 全資産の20/100以上の自己資金
資産調達 寄付金・補助金 寄付金・会費・補助金
出資持分 × 〇(社団のみ)
残余資産の処分 帰属すべき者に帰属

国庫

帰属すべき者に帰属

国庫

指導監督 (所轄庁)
(厚生労働大臣) ×
(都道府県知事)
(市長) 〇(指定・特定) ×

税制と補助金による違い

社会福祉法人(社会福祉法) 医療法人(医療法)
法人税 非課税

※収益事業により生じた所得は22%課税

課税(所得の30%)

※特定医療法人は、所得の22%

都道府県税 原則非課税 課税
市町村税 原則非課税 課税
事業税 原則非課税 原則非課税

※自由診療に限り課税

固定資産税 非課税 課税

※医療関係者養成所の固定資産は非課税

補助金(施設設備)
補助金(運営費)

医療法人と社会福祉法人の介護職の仕事内容に違いは?

基本的に仕事内容については、違いはありません。

しかし、法人が違うため「働き方」に違いは出てきます。

 

例えば、医療法人の場合は、病院が併設されていることになるので、介護職は医師や看護師などのメディカルスタッフとともに働くことになります。

メディカルスタッフと介護職の場合では、「医療の現場」であるので、当然メディカルスタッフのほうが上の立場となり、介護職は常に医師や看護師の指示の下で働くことになります。

一方、社会福祉法人の場合は、主治医や看護師も在籍はしていますが、基本的には「介護の現場」であるため、介護職が主体となって働くことになります。

 

つまり、介護職にとっての「医療法人」と「社会福祉法人」の違いは、仕事内容ではなく、働き方に大きな違いが出てくるのです。

医療法人と社会福祉法人の介護士の給与・賞与の差はある?

一昔前までは、社会保険よりも医療保険に対する国家予算が大きかったため「医療法人の方が給与は高い」と言われていました。

ですが、現代では社会福祉法人でも待遇が良くなってきているため、あながちそうではなくなってきています。

実際に求人情報を元に比較してみました。

データに均一性を出すため「東京都 正社員」で求人情報を検索しています。

法人格 職種 月給 賞与
医療法人 介護老人保健施設 184,500~
255,000円
年2回
(3.5か月)
医療法人 介護老人保健施設 無資格
230,000円~介護福祉士
260,000円~
年2回
(3.0か月)
社会福祉法人 特別養護老人ホーム 197,400~
213,900円
年2回
(3.2か月)
社会福祉法人 有料老人ホーム 204,000~
256,000円
年2回
(3.0か月)

どうでしょうか?

上記の表から分かるように、医療法人でも社会福祉法人より給与が低いところもあれば高いところもあります。

賞与に関してもほとんど変わりはありません。

医療法人には莫大な国家予算が投じられているのは事実ですが、医療法人に勤めているからと言って給与が高いわけではないのです。

 

関連記事:介護福祉士の給料や平均年収【給与明細を大公開】

 

法人格の違いによって「介護の質」に差は出るもの?

法人格の違いによる「介護の質」に差が出ることはありません。

医療法人は、医療と密な関係にあるので「医療法人の方が良い介護サービスが提供できているのではないか?」と思ってしまいますが、実際のところは関係ありません。

医療法人でも質の悪いところもあれば良いところもある。

社会福祉法人も質の悪いところもあれば良いところもある。

これは「法人格の違い」によって生み出されるわけではなく、「その施設・病院」の長い歴史により生み出された「介護の質」です。

よって、法人格の違いで介護の質が変わることはないのです。

医療法人と社会福祉法人|介護職として働くメリット・デメリット

メリット デメリット
医療法人 ・医療と介護の関係が密接

・介護度が低い利用者が多い

・介護士は最下層として見られる

・ケアの方法について介護職は基本的に口出しできない

社会福祉法人 ・介護職が主体で働きやすい

・介護職が利用者の生活面やケアについて提案することができる

・医療を学ぶ機会が少ない

・介護度が高い高齢者が多い

医療法人と社会福祉法人の大きな違いは「医療が密接な関係にあるかどうか」ということです。

それが医療法人と社会福祉法人の両方のメリットとデメリットになっているのです。

医療が近くにあれば、

「急変したらどうしよう」「転倒したらどうしたらいい?」

などの不安は、ほぼ払拭されるはずです。

ですが裏を返せば、医療が近くにあるからこそ医師や看護師との人間関係につまずくこともありますし、最下層として見られプライドが傷つくこともあります。

一方で、社会福祉法人のように、医療が近くにないからこそ医療的な知識が医療法人に比べて疎いといったことや、介護度が高い利用者が多く仕事がキツイといったことにも繋がってくるのです。

 

関連記事:看護師って介護職に対して何であんなに偉そうなの?

 

どちらで働くかはあなたの「介護観」によって異なる

では、「医療法人」と「社会福祉法人」どちらで働くのが良いのでしょうか?

仕事内容や給与にはさほど差はなく、違うといえば「医療が主体」「介護が主体」ということです。

高齢者をケアする中で

「高齢者に元気になってほしい」

「医療の現場を近くで見たい」

という場合は医療法人に就職・転職と良いでしょう。

逆に、

「高齢者には穏やかでマイペースな生活を送ってほしい」

「介護を最下層として見られるのは嫌」

と思うならば社会福祉法人がおすすめです。

あなたの介護に対する思いによって、医療法人が良いのか社会福祉法人が良いのかが異なってくるので、自分の介護観がどういったものなのか考えてみてください。

 

関連記事:介護職で1番楽で暇な介護施設はどれ?現役介護士によるおすすめランキング

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