介護業界の人員不足が年々深刻化されています。
ですが、中には「人員は居るが人材が居ない」という施設が存在しているのも事実です。
就職者が減り、退職者が増加している現状で『管理職が退職する』という話も介護業界では珍しい話ではありません。
新たな管理職を配置する必要があっても、「人材不足」から管理職を選任することが困難となり、実務経験が浅い職員が管理職になる場合もあるのです。
「名ばかりの管理職」が増加している現実を覆さなければなりません。
この記事では、介護の管理職を考えている人向けに、待遇面(給料や手当など)や仕事の実態、なる上での注意点などを記載しているので、参考にしてください。
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介護の管理職を目指す人向け|必ず知っておくべき基礎知識
① 介護事業所における管理職の種類
介護事業所における管理職の種類は11種類あります。
- 施設長
- 課長
- 部長
- 主任
- 副主任
- フロアリーダー
- チームリーダー
- 介護長
- 介護主任
- 班長
- サービス提供責任者
主な管理職の種類を挙げましたが、施設によって名称が違ったり「課長・部長なし」の施設もあるなど形態はそれぞれです。
「施設長・課長・部長」は施設や運営に関しての管理を行い、その他の管理職に関しては現場での指示・監督を行うことが一般的です。
② 管理職の平均年収・給料・手当
管理職の平均給料は、施設や所属の部署・地域に大きく左右されます。
参考:「平成27年介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、平成27年9月時点での管理職の平均月給は「305,680円」となっています。
年収にするとおおよそ「360万円」程度が平均年収となります。
管理職手当についても施設によって20,000円~50,000円と差がありますが、『30,000円程度』が支給されることが一般的です。
③ 管理職になるとどのような仕事を担当することになる?
- 利用者の御家族への状態報告
- 介護現場の指導・監督
- 新人職員への教育、指導
- シフト作成 など
管理職をする上で不可欠な事務仕事も大切ですが、一番重要なのが『介護現場の指導・監督』です。
職員にとっては働きやすい環境を。
利用者にとっては生活しやすい環境を整えなければなりません。
職員にとって働きやすい環境がなければ、退職者が増えて経営が成り立たなくなりますし、利用者にとって生活しやすい環境がなければ評判が落ち業績が悪化します。
介護施設の管理職は、事務仕事だけではなく、常に現場を見ておく必要があるのです。
④ 施設長を含む管理職に就くには介護資格は必要?
訪問介護事業所の場合、管理者は「サービス提供責任者」の兼務が認められているので、兼務する場合は
- 介護福祉士
- 実務者研修修了者
- 介護職員初任者研修修了者+実務経験3年以上
- 介護職員基礎研修修了者
上記のうちのいずれかの資格が必要です。
他の事業所の役職者の場合、資格を問われることはありません。
ですが、ほとんどの施設では介護福祉士・介護職員初任者研修・実務者研修取得者が優遇される傾向があります。
施設長に関しては、特別養護老人ホームの施設長となる場合「社会福祉主事」の要件等が必要です。
その他の事業所の施設長については、各施設で任意の基準が定められているだけで「必須資格」というものは特に定められていません。
介護業界で管理職として働く方法は2つ
① キャリアを積んで管理職を目指す
まずは現場でキャリアを積み、管理職になる方法が一般的です。
介護業界は非常に職員の定着率が悪い職種ではあるので、若くして管理職になる場合や、年数が浅いにも関わらず管理職を任される場合があります。
キャリアを積んでから管理職になると、同僚からの信頼もありますし、自分が良く知っている施設だからこそ、業務改善の提案もしやすいなどメリットがたくさんあります。
② 【転職】介護事業所の管理職向けの求人募集にエントリーする
介護求人サイトなどで「管理職候補」の求人募集があるので、それにエントリーするのが管理職になるための一番の近道です。
ただし、管理職には「管理職手当」がつくので、現場職員よりも給料が高いことから、他の人もエントリーしている可能性が高いです。
ですので、エントリーしたからといって100%採用されるわけではありません。
次項目で解説しますが、新設された介護施設での管理職募集には注意が必要となります。
介護求人サイトの賢い選び方|確認するべき5つのチェックポイント
【転職を検討する人に】管理職として働く上で注意するべき4つのポイント
① 新設された介護施設の管理職の募集は要注意
近年、あらゆる地域で介護施設の新設が行われていますが「オープニングスタッフ募集」の介護求人を見たことはありませんか?
オープニングスタッフ募集の中には「管理職募集」というものも結構あり、給料も他の介護施設に比べれば高めに設定されていることが多いです。
ですが、新設された介護施設の管理職になる際は重々注意してください。
ただ単に、介護施設の管理職になるという簡単な問題ではなく「新設」ということは「仕事の土台すらない状態」であるということです。
どの施設も10時になったら排泄ケア・12時になったら食事…などと1日の流れが大体の時間帯で決まっています。
新設の施設は、そのような土台すら未完成の状態なので、まずそこから考えていく必要があります。
「利用者の1日の流れを考えること」
「施設内の生活環境を整えること」
「利用者の面接や契約をしなければならないこと」
など、新設の施設にはしなければならないことが山ほどあります。
それでも新オープニングスタッフとしての管理職をしたい場合は、それに対応できるほどのスキルと忍耐力・覚悟が必要です
② 残業手当がゼロの施設が多い
介護職だけに限らず、一般企業でも管理職の残業代が発生しないという事例があります。
「管理職手当を出しているのだから残業代は支給されない」という話も良く耳にしますが、それは果たして正しいことなのでしょうか?
残業代が発生しない施設がある一方で、きっちりと残業代が支払われている施設もあります。
『管理職の平均年収・給料・手当』で解説した通り、管理職の手当は平均「30,000円程度」となっています。
1日1時間残業したとすれば、1か月の残業時間はおよそ「22時間」
これを時給に換算すると「1,363円」となります。
管理職である責任と任務、そして残業、これらに見合った役職手当であるならまだしも、そうではないことなんて一目瞭然ですよね。
もともと残業手当が発生しないのが当たり前となってしまっている介護業界なので、それなりの覚悟が必要です。
ですが、
・残業がない施設
・残業代が発生する施設
があれば、かなりおすすめです。
「実利のない名誉職」にだけはならないよう、事前の確認しておきましょう。
③ 職員同士の仲介役もしなければならない
職員同士のトラブルというのは、介護施設にはつきものです。
「〇〇さんが、こんなことしてました」
「○○さんに、〇×△って言われたんですけど!」
など、他の職員の苦情やトラブルの報告は管理職にすべてのしかかってきます。
介護施設は人員不足の業界なので、トラブルが原因で職員に辞めてもらっては元も子もありません。
両者に納得してもらえるように話を進め、解決し、良き職場環境を作り出さないといけないのも管理職の大きな役割です。
職員同士の仲介役をすることが、管理職になった上で一番大変なことだと言っても過言ではありません。
④ 人員不足の場合、現場の業務や夜勤までしなければならない
通常、管理職というのは、利用者家族への報告業務や、事務系の仕事をメインとするため、介護現場に入ることはほぼないと言えます。
ですが、人員不足が深刻化される施設では、現場の人員が整っていません。
なので、管理職が事務仕事に打ち込むといったことはできるはずもなく、現場業務に入るのは必須です。
更には、「夜勤までこなさないといけない」という実例もあり、「管理職=事務」という成り立ちは現在の介護業界では失われつつあります。
現場に入る時間が増えれば増えるほど、管理職業務に手が回らなくなり、やむを得なく残業をしなければならない場合もあります。
ですが、そこには「残業手当」が発生しない可能性も大いにありますし、期日までに管理職業務を終わらせなければならないというストレスから退職に追い込まれることもあるでしょう。
中には「介護現場に入ったら息抜きになる」という意見もありますが、管理職に就いている以上、そのような綺麗ごとでは終わらせることができないほど大変な仕事なのです。
管理職として1番大切なのは職員から信頼される人物であること
管理職として一番大切なのは職員から信頼される人物であるということです。
現場から嫌われるような管理職であったら、退職者が増加する一方で経営が成り立たなくなりますし、現場の雰囲気が悪くなってしまいます。
実際、「管理職は嫌われ者でなければならない!」と言うのが口癖の主任に出会ったことがありますが、その施設では主任の評判が非常に悪く、職員の介護に対するモチベーションも下層レベルで、良い介護をしているようには見えませんでした。
一方で、主任が厚い信頼を得ている施設では、職員同士の協力体制が素晴らしく、施設全体の雰囲気がものすごく良く見えました。
管理職になるならば、現場の声にしっかり耳を傾け、信頼を得ることで管理職としても働きやすい環境を整えましょう。
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